慶應義塾大学理工学部の中嶋 敦 教授、渋田 昌弘 特任准教授(研究当時。現・大阪市立大学准教授)、井上 朋也 助教らは、気相中で生成したアルミニウムナノクラスター超原子を有機分子で修飾した有機基板に担持することでアルミニウム超原子修飾基板を作製すること成功し、アルミニウム13量体超原子が負イオン状態で基板上に固定化されることを明らかにしました。
新規ナノ構造体による機能基板の開発は、化学変換過程やエネルギー変換過程の一層の効率化を通して、エネルギーや環境の問題を克服するために極めて重要です。原子が数個から数十個集合したナノクラスターのなかには、原子と同じような電子状態をとることから、ナノクラスター超原子と呼ばれるナノ構造体があることが知られていました。しかし、原子数、組成を単一にしたナノクラスター超原子の生成が難しいことに加えて、基板表面では、表面の特性や構造の乱れのために、ナノクラスター超原子が変形したり、電荷状態が変化することなどによって安定化できないという課題がありました。
本研究グループは、気相法により清浄なアルミニウム13量体超原子(Al13-)を大量合成して、担体としてC60などの有機分子で修飾した有機基板を用いることによって、Al13-超原子を秩序的に基板固定させました。アルミニウム原子の集合したナノ構造体は、極めて酸化されやすい化学種ですが、13原子を集合させて秩序化膜を作成させることによって、その酸化反応性を2桁程度低減できることを見出しました。これらの結果は、アルミニウム超原子による機能ナノ構造体基板の開発として利用価値が高いと考えられます。また、これらの成果は、次世代の化学変換、エネルギー変換を実現するナノ構造体の機能創成につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年3月14日(英国時間)にシュプリンガー・ネイチャーの学術誌「Nature Communications」で公開されました。