慶應義塾大学大学院理工学研究科の修士2年 小暮悠暉、同大学理工学部の岡浩太郎教授、堀田耕司准教授らは、オーストリアIST研究所のC. P. Heisenberg教授、Benoit Godard博士と共同で、ホヤの腹側方向に湾曲した胚(生まれる前の段階の個体)の形を制御する遺伝子を見出しました。さらに、この遺伝子が一部の表皮細胞の形を変えることにより、勾玉状の胚の形をうみだすことを明らかにし、尾部の湾曲機構の新規モデルを提案しました。
ホヤからヒトまでを含む脊索動物の多くは尾の形成される時期(尾芽胚期)にいくつかの類似した形態を示します。そのうちの一つに胚の腹側への湾曲があります。本研究ではホヤの尾部が腹側へ湾曲する際、表皮細胞は特殊な三次元構造をもつ「舟型細胞」になることを発見しました。また、本研究成果より、この舟型細胞の形成が尾部の湾曲を制御するモデルを提案しました。このモデルでは、尾の中軸組織である脊索の伸長力と腹側表皮のみにある舟型細胞による抵抗力が連携することで、尾部が腹側へ湾曲します。
本研究成果はさまざまな脊索動物の個体全体の形づくりの理解に大きく貢献すると期待されます。また、三次元的な組織・器官を作り出すための再生医療や試験管内で人工的に胚を作り出す技術の発展に役立つと考えられます。
研究成果は、2022年10月19日に発生生物学の国際専門誌『 Development 』に掲載されました。