慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科の加藤弘陸特任助教、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介助教授、ハーバード大学のAnupam B. Jena准教授、Jose F. Figueroa助教授の共同研究グループは、アメリカの65歳以上の高齢者を対象とした大規模な医療データを用いて、年間臨床勤務日数の少ない医師が治療した患者の死亡率は、年間臨床勤務日数の多い医師が治療した患者の死亡率よりも高いことを明らかにしました。医師を年間臨床勤務日数で四分位群に分けたところ、年間臨床勤務日数が最も少ない群の医師が治療した患者の死亡率は10.5%である一方、年間臨床勤務日数が最も多い群の医師が治療した患者の死亡率は9.6%であり、この2つの群には0.9%の死亡率の差がありました。これは臨床的に無視できない差だと考えられます。
子育てなど家族のケア、研究、管理職業務を行うためといったさまざまな理由から、アメリカではパートタイムで臨床を行う医師は増加傾向にあります。しかし、パートタイムで臨床を行う医師が提供する医療の質が、フルタイムで臨床を行う医師の提供する医療の質と比べて同じか否かは、これまでほとんど検証されていませんでした。そこで本研究では、病院に緊急入院し、ホスピタリスト(入院治療を専門にしている内科医)の治療を受けた患者を対象に、医師の年間臨床勤務日数と患者死亡率の関係を検証しました。
本研究の結果は、パートタイムで臨床を行うことは患者の死亡率増加をもたらす可能性があり、そのような事態を防ぐためには、パートタイムで臨床を行う医師に対する追加的な支援が必要である可能性を示唆しています。
本研究成果は、2021年9月13日(米国東部標準時)に米国医学誌の「JAMA Internal Medicine」にオンライン掲載されました。