国立病院機構東京医療センター聴覚障害研究室の和佐野浩一郎室長、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室の小川郁教授らの研究グループは、過去に行われた約7万件の聴力検査の結果から、年齢以外に耳疾患の影響を受けていない対象を抽出し解析することにより、1万人を超える聴力の加齢性変化に関するデータベースを構築しました。このデータベースは世界最大規模で、10代から90代までの幅広い年齢層の男女別データを含む世界初のデータベースです。本研究で解明された日本人における男女別および年齢別の平均的な聴力は、認知症対策など聴覚の活用に向けた積極的な介入を行うための基礎データになることが期待されます。
また、対象となった20年の間に40代以下の若年層において高音部(4000Hz)の聴力が徐々に低下していることが示されました。これはポータブル音楽デバイスなどによる日常的な騒音曝露の影響によるものと考えられ、イヤホンやヘッドホンなどにおける過大音に対する対策の必要性を示唆する結果であると考えられます。
本研究成果は、2021年3月24日(日本時間)に『The Lancet Regional Health - Western Pacific』電子版に掲載されました。