理化学研究所(理研)生命医科学研究センターメタボローム研究チームの津川裕司研究員(環境資源科学研究センターメタボローム情報研究チーム研究員)、有田誠チームリーダー(慶應義塾大学薬学部教授)らの国際共同研究グループは、生命活動に必須の分子である脂質の構造多様性を明らかにするための革新的なノンターゲットリピドミクス解析技術を開発しました。
本研究成果は、生体を構成する脂質の「質」(リポクオリティ)の違いを的確に捉えることを可能にするものであり、生命科学研究のさまざまな分野における複雑な生命現象の理解に貢献すると期待できます。
近年、質量分析法を用いて脂質構造の多様性を捉えようとする研究が盛んに行われています。しかし、質量分析ビックデータは複雑かつ膨大であり、またMS/MSスペクトルから脂質構造を包括的に解明することは困難なことから、その全貌はほとんど明らかになっていませんでした。
今回、共同研究グループは、ヒトおよびマウスの臓器・組織・細胞、腸内細菌叢などの脂質成分を網羅的に捉えるため最先端の質量分析手法によるノンターゲット分析を行いました。得られた質量分析ビッグデータを解析するための情報処理技術(質量分析インフォマティクス)を開発した結果、既存の研究に比べおよそ10倍に上る約8,000種の脂質分子構造の存在が明らかになり、脂質構造の多様性を捉えることが可能になりました。
本研究は、科学雑誌『Nature Biotechnology』オンライン版(6月15日付:日本時間6月16日)に掲載されました。