慶應義塾大学理工学部応用化学科の高橋大介准教授、戸嶋一敦教授らは、単糖が鎖状に連結した分子である「糖鎖」の中でも、立体選択的な合成を効率的に行うことが困難であったβ-L-ラムノピラノシド(以下、β-ラムノシドと省略)を、有機ホウ素化合物を用いることで、完全な立体選択性で合成する有機化学的新手法の開発に成功しました。
β-ラムノシドは、肺炎球菌および大腸菌をはじめとする様々な病原菌の抗原として含まれていることから、ワクチンへの応用が大きく期待されています。しかし、病原菌から抽出されるβ-ラムノシドは、構造が不均一かつ、その他の分子との混合物として得られるため、病原菌由来の毒性部分を含んでしまう可能性がありました。一方、本研究で開発した有機化学的手法を応用することで、毒性部分を含まない単一な糖鎖抗原の効率的な合成が可能となり、安全性の高いワクチンの開発・発展が期待されます。
本研究の成果は、2018年8月11日に、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition (アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション)」のオンライン版で公開されました。
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