リンが体内で正常に代謝されることは、寿命を制御するために必須ですが、その体内メカニズムは明らかではありませんでした。このたび、慶應義塾大学医学部の宮本健史(先進運動器疾患治療学寄附講座特任准教授)らは、リンに対して寿命を制御する分子Enpp1がKlothoの発現に大きな影響を与える分子として、老化を制御していることを世界で初めて明らかにしました。
今回の研究において、通常のマウスと、リンを体内でコントロールできないマウスに通常食の1.5~2倍程度(通常のマウスには老化の特徴が発現しない程度)のリンを摂取させたところ、リンを正常にコントロールできないマウスには動脈硬化や骨粗鬆症などさまざまな老化状態が現れ、数週間程度で死に至るほど短命になることが明らかになりました。この研究結果は、食事摂取によるリンは、体内で正常に代謝できなければ、老化現象につながることを導き出し、その制御のための分子機構の一端を解明しました。
近年、日本で急速に進行する高齢社会において、老化への理解は欠かせません。今回の研究は、老化制御機構の一部を解明することで、動脈硬化や骨粗鬆症など、健康寿命に関連する病変を防ぎ、健康的で自立した生活をめざすヘルシーエイジングのために重要な発見と考えられます。
本研究成果は2017年8月10日、学際的総合ジャーナル『Scientific Reports』誌に掲載されました。
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