(公財)東京都医学総合研究所の平井志伸研究員、岡戸晴生副参事研究員らは、慶應義塾大学理工学部の堀田耕司専任講師と共同で、AMPA型グルタミン酸受容体(以下AMPA受容体)の新しい機能を発見しました。これまでにAMPA受容体の機能は、哺乳類の成体の脳で興奮性シナプス伝達の担い手として、学習・記憶に重要な役割を担っていることが知られています。一方、この受容体は胎児期の早期より発現がみられますが、発生期における役割は明らかとなっていませんでした。AMPA受容体の発生期における役割を明らかにするために、AMPA受容体の機能を低下させる実験が役立ちますが、哺乳類ではAMPA受容体が4つ存在するため、そのような実験が技術的に困難でした。そこで本研究では、脊椎動物の祖先として知られる原索動物であるホヤを用いて解析しました。ホヤはAMPA受容体が1つのみで、さらに受精から成体になるまでの発生の過程が観察しやすいという点を活用しました。その結果、AMPA受容体が、哺乳類の松果体に相当する光受容感覚器形成に必須であること、さらに、変態という、多数の生物がもつ成体への変化を起こす現象にも必須であることを明らかにしました。本研究は、個体レベルでAMPA受容体の機能解析を行った初めての研究であり、AMPA受容体の発生における新たな機能を発見することに成功しました。
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