慶應義塾大学医学部整形外科学教室の松本守雄教授、渡辺航太専任講師、国立環境研究所の道川武紘研究員、東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野の西脇祐司教授ら側弯症生活習慣研究グループは、東京都予防医学協会と共同で、思春期特発性側弯症(以下、側弯症)に関連する生活習慣について調査し、多くの日常生活習慣や動作は側弯症に関連がないこと、そして、バレエなどの一部の運動が関連しているということを発見しました。
側弯症は背骨がねじれるように曲がる疾患です。神経や筋肉の病気、脊椎の奇形などの既知の原因で起きる場合もありますが、多くは原因が特定できない特発性側弯症というタイプです。特発性側弯症の中で最も発症の頻度が高いのが、思春期に発症する特発性側弯症で、日本人の約2%にみられます。今まで側弯症の発症には遺伝的要因が関与すると考えられ、慶應義塾大学医学部整形外科学教室と理化学研究所骨関節疾患研究グループは、側弯症の発症に関係する遺伝子「LBX1」「GPR126」「BNC2」を世界に先駆けて発見しています。しかし、疾患の発症や進行には遺伝子だけでなく、母胎内の環境や出生後の生活環境、運動、生活習慣も関与していると考えられます。そこで研究グループは東京都予防医学協会の協力のもと、2,600人の中学生(女子)とその家族に生活習慣、スポーツ歴、発育、妊娠出産時の状況などについての38項目の質問票調査を行い、側弯症と関連する環境因子についての解析を行いました。その結果、側弯症と生活習慣の関連について、通学鞄の重さ、鞄の種類、寝る姿勢、睡眠時間、布団やベッドなどの就寝習慣、食生活などは側弯症とは関連はなく、一方で、バレエなどの一部の運動は側弯症と関連があることを発見しました。
本研究は、これまで明らかではなかった生活習慣や運動と側弯症の関連について調査を行い、一部の運動を除いて、両者の間に明らかな関連性がないことを発見しました。
今回の結果によって、側弯症の児童やその家族が側弯症の関連因子について正しい情報を得ることができ、生活上の不安が取り除かれると考えられます。
この研究成果は2月15日、整形外科学分野の総合科学雑誌「The Journal of Bone & Joint Surgery」に掲載されました。
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