理工学部の中嶋敦教授が「ドイツのノーベル賞」とも称される、2020年の「フンボルト賞」を受賞しました。受賞にあたっては、新たな「シリコンフラーレン」の生成が評価されました。「シリコンフラーレン」は、近年懸念されている「シリコン素子の集積限界」を打ち破る可能性を秘めています。そのほか、光を電気に換える性質を使った太陽電池、触媒として、あるいは、磁性の活用など、近い将来、多方面での実用化にもつながる、世界でも画期的な研究成果といえます。
現在、COVID-19の感染拡大で、学校や職場、家庭でも、インターネットを介したコミュニケーションがますます浸透しています。そして、ネット社会の必需品は、端末であるスマートフォンやパソコンです。これらの端末、つまり、小さなコンピュータによる、画像や音声などの大量の情報処理は、端末に内蔵されたシリコンチップに支えられています。言い換えれば、シリコンは、現代のコンピュータ社会、ネット社会を支えています。
大学や企業の研究開発競争の結果、シリコンチップは、どんどん小さく、高密度に集積できるようになり、スマホなど小型端末のデバイスにも実装されるようになりました。しかし、いつかは物理的な限界がやってきます。社会のネットインフラを維持、発展させるためにも、特に産業界では、「シリコン素子の集積限界」への懸念が増大しており、シリコン素子と同様の物性をもつ、さらに小さなナノ物質が必要とされているのです。