慶應義塾

1: ミクログリアが、傷ついた神経細胞を包み込み保護する仕組みを解明/ 2: 冠動脈カテーテル治療手技、その合併症の「重み」: 大学病院・関連施設の共同登録事業からの検証

今月のサイエンス - 2026年06月

1: ミクログリアが、傷ついた神経細胞を包み込み保護する仕組みを解明

Journal of Neuroinflammation.     

2026 May.doi.org/10.1186/s12974-026-03848-6

Koji Sekiguchi, Hirotaka Shoji, Tomoko Shindo, Jumpei Sasabe, Daiki Tokuyasu, Jin Nakahara, Tsuyoshi Miyakawa, Daisuke Ito

右から、関口耕史助教(筆頭著者)、伊東大介特任教授(責任著者)

我々は、顔面神経切断による軸索損傷モデルを用いて、ミクログリアに広く発現するタンパク質Iba1が、損傷後のシナプス再編および運動ニューロンの生存に重要な役割を持つことを明らかにしました。

神経損傷後にミクログリアが運動ニューロン周囲に集まり被覆することは知られていましたが、その分子機構と生物学的意義は不明でした。本研究では、Iba1欠損マウスと野生型マウスに顔面神経切断を行い、複数の解析手法を組み合わせて検討しました。その結果、Iba1欠損マウスではミクログリアによる運動ニューロン被覆が低下し、シナプス再編が不十分となり、後期には運動ニューロン生存率の低下とDNA損傷応答の増加が認められました。本成果はIba1が神経細胞保護に関与することを示します。今後、Iba1の機能制御を通じてミクログリアの働きを調整することで、アルツハイマー病をはじめとする神経疾患の新たな治療戦略の確立が期待されます。

(内科学(神経)教室 伊東大介)

図.Iba1は軸索損傷後のミクログリアによる運動ニューロン被覆・シナプス再編に関与する(模式図)

2: 冠動脈カテーテル治療手技、その合併症の「重み」: 大学病院・関連施設の共同登録事業からの検証

JACC Cardiovascular Interventions.     

2026 Mar 10:S1936-8798(26)00664-3

Takahiro Suzuki, Yasuyuki Shiraishi, Shun Kohsaka, Daisuke Yoneoka, Ikuko Ueda, Takanori Ohata, Yohei Numasawa, Keisuke Matsumura, Kenichiro Shimoji, Mitsuaki Sawano, Masaki Ieda

左から、香坂(責任著者)、鈴木(第一著者:共同研究員[聖路加国際病院所属])、白石(第二著者)。鈴木医師は研究員として本学に毎週訪問し研究を実施。

循環器内科といえば 「カテ」 、そんなイメージをお持ちの先生方も多いのではないかと思います。が、「カテ」 は侵襲的な手技であるが故に、出血、動脈の内的損傷による閉塞、そして急性心不全などの合併症がある一定の割合で起こります(年間数%というところですが)。しかし、これまでこうした合併症が、その後の生命予後をどこまで左右するのかは、十分に整理されてきませんでした(年間数%のイベントを登録し、さらにその予後を追うという作業はかなり困難です)。当科では「カテ」の多施設共同登録を2009年から行ってきましたが、今回の報告はその集大成となるものです。その結果は図の通りですが、10,482例を2年間追跡し、急性心不全の発症は死亡リスクを約6倍に高め、最も強い死亡関連因子であることが明らかとなりました。さらに人口寄与割合(PAF)という逆の視点でみると、死亡で急性心不全が関連していたのは20%に達していました。全ての循環器疾患は心不全に通じる、というのはこの領域で良く言われることですが、やはり「カテ」を行う際にも、心不全の予防に万全を期すという俯瞰的なスタンスが重要と考えられました。なお、詳細は掲載誌のPodcastもご確認いただければ幸いです。

(内科学(循環器)教室 香坂俊)

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その他の掲載論文

1)Immunotherapy Response in Microsatellite Instability–High Gastroesophageal Adenocarcinoma

Jun Okui, Laura R. Prakash, Heather G. Lyu, Ryan B. Morgan, Jenny J. Li, Mariela A. Blum-Murphy,  Jaffer A. Ajani, Wayne L. Hofstetter, David C. Rice, Paul F. Mansfield, Stephen G. Swisher, Brian D. Badgwell, Naruhiko Ikoma