慶應義塾
Keio LIFE

#21

「好き」を貫く勇気〜パリオペラ座に憧れた彼女の、新たな幕開け

#Feature#Person#Challenge
公開日:2026.10.23
幼少期からの夢を叶え、バレリーナとしてスポットライトを浴びていたひとりの女性。彼女は今トウシューズを脱ぎ、ペンを握って新たな挑戦を続けている。 人生の大きな転機において、変化に臆することなく未知の環境へ飛び込める原動力は何だろうか。自分で切り開いた道の先で楽しみながらもひたむきに成長する南さんの核心に迫る。

プロフィール

南 怜緒(みなみ りお)

在学生/文学部社会学専攻3年

15歳でフランスのバレエ学校のオーディションに合格し単身渡仏を決心。学校を首席で卒業後、プロのバレリーナとしてヨーロッパ中で活躍。友達からはプロのバレリーナとして培ったストイックさを持つ反面、かなり陽気な一面があるとも言われている。

15歳で単身渡仏し、プロのバレリーナになった人生を振り返って

まめ (Editor) :

プロのバレリーナを目指したきっかけは何でしたか。

南 :

8歳か9歳の誕生日に、パリオペラ座バレエ団の『シンデレラ』のDVDを母が買ってくれたことです。それを見た時に「こういう世界で働きたい」と憧れました。プロを目指そうと思ったのも、その後の活動先をフランスに決めたのも、これがきっかけです。

まめ (Editor) :

バレエに打ち込むモチベーションは何にありましたか。

南 :

ある時、『シンデレラ』に出演していたアニエス・ルテステュさんが上野に公演で来たことがあって。彼女は、パリオペラ座のエトワールという、一番トップになられた方です。この方と撮った写真を見て「いつかこの人のように踊るんだ」と自分を鼓舞していました。渡仏前は学校終わりに23時まで練習するときもあったんですけど、苦痛を感じたことはなかったです。ただただ楽しくて、上手になりたくて打ち込んでいました。

2019年 パリのバレエ学校にて
まめ (Editor) :

プロになるまでの過程について教えてください。バレエ学校を首席で卒業したとお話を伺いましたが、秘訣は何ですか。

南 :

中学3年生の2月頃にフランスのオーディションで合格し、15歳で単身渡仏しました。それからは、午前中は現地の高校で勉強をして、14時から20時までバレエ学校でレッスンを受けていました。勉強とバレエの両立は大変でしたが、何事においても自分が一番になるっていうこだわりがあって。バレエに関しても「絶対にこの世界に入る」という強い意志があり、その心持ちを最後まで突き通した感じです。

プロバレリーナの生活を振り返って

まめ (Editor) :

プロとして活動していたときの生活について教えてください。

南 :

バレエ学校を卒業し、プロを3年経験しました。バレエ団が所有する劇場で公演したり、ヨーロッパ内のドイツ・イタリア・スイスなどをツアーで回ったりしていました。

普段は、8時半頃に現場に早入りしてピラティスをしていました。10時から11時半のウォームアップのクラスレッスンで自分の身体と向き合った後、18時までリハーサルを行い、1日を終える感じです。自分の身体と対峙するだけでなくて他のダンサーの方と一緒に踊ることもあるので、自分とも他者とも誠実にコミュニケーションを取ることを意識していました。

バレエシューズ着用の様子。
まめ (Editor) :

活動する中で、困難に感じたことはありましたか。

南 :

バレエって、頭の中ですごくいろんなことを考えて、それを体で表現する特殊な芸術なんです。それがうまくいくときはいいんですが、うまくいかない時は自分の中で抱え込んで反芻してしまっていました。

海外生活が長くなるにつれて、自分の居場所が全くわからなくなることもありました。日本に帰省すると日本の良さを実感する反面、フランスに帰るとそこにも自分の生活があって。自分の中で悶々と考えることもあったんですが、ヨーロッパは比較的多国籍な環境だったので「どう捉えたらいいんだろう」と現地の友人に相談をして、前向きに受け止めるようにしていました。いろんな文化があることは、自分の中での豊かさが増えることでもあると思うんです。日本とフランス、どちらも選択できるからこそどちらかを捨てないといけないと思いがちなんですけど、二者択一ではなくて、いつでもどちらにでも行けるというマインドセットでいるようにしています。

パリから慶應へ。その背景にあった、自己対峙と家族への想い。

まめ (Editor) :

世界で活躍されていた南さんにとっては、キャリアとして数多の選択肢があったと思います。そんな中で、日本の大学に進学した理由はありますか?

南 :

自分を見つめる時間と、家族との時間を大切にしたかったからです。

バレエはパンデミックが起きたときに一番打撃を受けた分野のひとつで、その際に自分のキャリアを考え直す必要性を実感しました。さらに、2023年に怪我をしてしまったんです。バレエは変わらず大好きだけど、将来を考える中で、夢を追い続けるだけでなく、長期的な視点で自分らしいキャリアを築いていきたいと思うようになりました。

また、幼い頃からバレエに打ち込んできたため、家族と過ごす時間は限られていました。ビデオ電話で繋がることはできても、実際に一緒にいられる時間は少なくて。そんな中で身内に不幸があり、家族や大切な人と過ごせる時間をこれまで以上に大事にしたいと強く思うようになりました。

こうしたキャリア面とプライベート面の両方を踏まえて、自分の可能性を広げながら新たな挑戦ができる環境として、日本に戻り大学へ進学することを決めました。

笑顔を向ける南さん。

自分を信じて未知の世界に飛び込むこと。

まめ (Editor) :

現在は家族親族学のゼミに所属されているとのことですが、そこに興味を持ったきっかけは何でしたか。

南 :

ゼミ担当の阪井裕一郎准教授の講義を2年生で初めて受講して、面白いと思ったのがきっかけです。家族って生まれて初めて見る社会でありながら、そのときに得た価値観は成長してもずっと残ったままだなって感じることが普段からあって。マクロな視点の社会じゃなくて、家族というさらに小さいところから社会を見るってどういう意味なんだろうと興味を持ちました。

まめ (Editor) :

南さんの思う、慶應の良さはどのような点にありますか。

南 :

意識の高い学生たちばかりで、常に刺激を受けられるところです。すごく色んな人がいるというか、様々なバックボーンがある方々が在学していると感じています。実際に、ご年配の方が学び直しとして来られてる姿を見て、人生はいつでも学び続けられるんだなと背中を押されています。

まめ (Editor) :

塾生や、慶應を目指している受験生、あるいは挑戦の一歩を踏み出すか迷っている方々に向けて、メッセージをお願いします。

南 :

自分が知らない世界に飛び込んでみることは非常にいいことだと思います。飛び込んでみると、新しい世界がまた広がるんです。変化を恐れず行動する勇気を持って努力すれば自分の行きたい方向性に自然と道が開いていくんだなと、バレエの経験を通して体感しました。

人と違うことをすることで不安になるのは自然なことなので、他者と比較するのではなく、数ヶ月・数年前の自分と縦軸で比べて今どう成長したかっていうふうに考えられるといいと思います。夢のために努力し続けることによって、自分の行動に自信が持てるようになるはずです。

本当に自分が好きなことに対する周りの意見を必要以上に気にしなくても大丈夫です。どんな場面でも、マイナスなことを言ってくる人は絶対いますから。私も過去に様々な反対意見を受けましたが、自分の「好き」を信じて行動したからこそ、今の私につながっています。もし挑戦するか迷っているなら、周りとは比較せず、未知の世界に飛び込む勇気を持って突き進んでほしいです。

バレエシューズ

※本記事は2026年時点の情報に基づき作成されたものです。

取材・撮影

ぽぽやま

文学部社会学専攻。社会心理学を学ぶために留学に行きます。夏から渡米ということもあり4年生になって帰省し実家から4時間かけて学校に通っています。電車の中での暇つぶしで始めたスライドパズルにドハマりし、睡眠時間を削るくらいマイブームです。

まめ

文学部社会学専攻。1人旅が好き。プランは大まかに立てて、気の向くままに散策したり趣味のオルゴール探しをしたり。最近は、ホワイトホース(カナダ)とシアトル(アメリカ)に行ってきました。次はアラスカに行きたいです。

K.S

総合政策学部。趣味は写真を撮ること、映画を観ること、広告を語ること。普段はクリエイティブサークルsense.でプロデューサーをしたり、CM制作会社でPMのアシスタントをしたりしています。最近の推し広告は「オロナミンC、元気ハツラツ!大空大合唱」