執筆者プロフィール
篠原 欣貴(しのはら よしき)
立命館アジア太平洋大学国際経営学部准教授2008商、13商修、16商博 専門分野/経営学、企業倫理
篠原 欣貴(しのはら よしき)
立命館アジア太平洋大学国際経営学部准教授2008商、13商修、16商博 専門分野/経営学、企業倫理
近年では「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が日本社会においても浸透してきたと感じています。私が勤務している立命館アジア太平洋大学は、学生と教員の約半数が外国籍であり、日本国内でも国籍面のダイバーシティが最も高い大学の一つといえます。私のゼミにもインドネシア、インド、ベトナム、ミャンマー、中国など、多様な国から学生が集まり、日々ともに研究を進めています。こうした環境に身を置くことで、これまで触れたことのない視点や価値観に出合い、研究者として大きな刺激を受けています。
例えば、現在ベトナム人の学生と進めている研究では、日本ではキャリア開発という点で男女間の大きな格差が存在する一方、外国籍の女性が日本で就業する場合には「女性」と「外国人」という二重の足枷がキャリア形成に影響しているのではないか、という点に着目しています。これは彼女が日本での生活や就業経験を通じて抱いた問題意識であり、日本人研究者だけでは気づきにくい視点だと感じています。
このように、私はダイバーシティの高い環境で多様な視点に触れる機会に恵まれています。その一方で同じ国籍の学生同士が自然と固まって行動する姿を、私は何度も目にしてきました。人は似た価値観や文化的背景を持つ相手といるほうが安心できますし、共通の言語を使ったほうがコミュニケーションもしやすいものです。そのため、多様な人々が集まる組織であっても、インクルージョンが自然と実現できるわけではありません。
インクルージョンとは、多様性が認められたうえで、個々人が自らの所属するチームや組織に一体感を持てている状態を指します。似た者同士だけで集まれば独自性は発揮されにくくなりますが、ダイバーシティが高まれば一体感の醸成が難しくなります。両者をどのように同時に高めるかは、組織にとって大きな課題です。
現在、私はインクルージョンを実現するためのリーダーシップのあり方とその効果について研究しています。リーダーシップは特定の誰かだけが発揮できるものではなく、組織のあらゆる人が発揮できる能力です。多様な人々が互いに尊重しながら力を発揮できる組織作りに、研究を通じて少しでも貢献できればと日々奮闘しています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。