執筆者プロフィール
柴田 淳史(しばた あつし)
薬学部 分子腫瘍薬学教授専門分野/ 生命科学、分子生物学
柴田 淳史(しばた あつし)
薬学部 分子腫瘍薬学教授専門分野/ 生命科学、分子生物学
生命は何のために生まれ、どのようにして生きているのでしょうか。その謎を解くための研究が、生命科学の研究です。それでは生命科学とは何でしょうか。生命を探求するための科学です。では科学とは何でしょうか。英語では「science(サイエンス)」と表現されます。おそらく多くの日本人は、ものづくり日本のイメージから科学と科学技術を同一に捉えている場合が多いと思います。国際的な視点に立った時に科学と科学技術は異なります。科学は「science(サイエンス)」であり、科学技術は「technology(テクノロジー)」です。ただ、これら2つの融合なくして人類の英知が進展することはなく、ニュートンやアインシュタインによる理論の提唱、ガリレオ・ガリレイによる望遠鏡の改良とそれを用いた天体観測の実現など、scienceとtechnologyは常に両輪として人類の知を推進しています。
みなさん、私たちの体の設計図であるDNAは毎日たくさん傷ついていることをご存知でしょうか。ただご心配には及ばず、私たちの身体は傷ついたDNAを治す「DNA修復」というしくみを持っています。DNA修復は生命を支える基本原理の1つであり、私はこのDNA修復のしくみを「見る」「知る」「操作する」ことを目標に研究しています。「見る」「知る」の部分では、蛍光イメージング技術によってDNA修復タンパク質の動きを観察し、その巧妙なしくみを知ろうとしています。ではなぜ操作したいのでしょうか。実はDNA修復はがん治療と深く関わります。がん治療である化学療法や放射線治療は、がん細胞に直しきれないほどのDNAの傷を引き起こすことでがん細胞を殺傷します。近年私たちは、がん治療時に生じるDNA損傷が免疫応答に与える影響に着目し、その反応を操作することで、がん治療効果の改善に取り組んでいます。私は30代の頃、英国に7年間滞在し、国際的な研究環境の中でDNA修復研究に取り組んできました。研究成果を英語で科学誌に発表することは、世界中の研究者と知識を共有し、この地球全体の科学を前進させることにつながります。今の時代を生きる科学者として、国境を越えた知の交流の中で、人々が日々健康で笑顔になる世界を夢見て、私は生命の基本原理であるDNA修復の全貌解明を目指し、日々研究を行っています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。