慶應義塾

杉山 諭:沖縄の未来を描く中高生の挑戦

公開日:2026.04.21

執筆者プロフィール

  • 杉山 諭(すぎやま さとし)

    一貫教育校 湘南藤沢中等部・高等部

    社会科教諭 専門分野/政治経済

    杉山 諭(すぎやま さとし)

    一貫教育校 湘南藤沢中等部・高等部

    社会科教諭 専門分野/政治経済

SFCの中高生が地域の課題に向き合う社会起業体験プログラムは、今年で6回目を迎えます。昨年の夏、私たちが訪れたのは離島・伊江島です。美しい景色の背後にある現実も、自分の目で確かめてほしい。そんな思いから始まった挑戦でした。

島の歴史や産業、米軍基地の現状について学んだ後、生徒たちは実際に島を歩きました。畑で働く人々の姿、静かな港、基地を望む風景。説明だけでは分からなかった重みが、歩くたびに胸に広がります。夕食の席で、ある生徒が「観光で来るのとは全然違う」とつぶやいたのが印象的でした。

後半のビジネスプランづくりは、予想以上に難航しました。4人1組の4グループに分かれて検討を重ね、特産品のハイビスカスを使った商品や観光客向けの体験型プログラムなどのアイデアは出るものの、話し合いは行き詰まることも多く、空気が重くなる場面もありました。「正直、もう無理かもしれない」とつぶやく声も聞こえました。

そのようなときに、そばにいた社会人講師の方が、急かすでも否定するでもなく、「いま何が引っかかっているのかな」と静かに問いかけてくれました。投げ出しそうになるたびに、その一言で空気は和らぎ、議論は少しずつ整理されていきます。「1回、紙に全部書き出そう」と言い出したのも、その流れの中でした。付箋だらけになった模造紙を前に、黙り込んだり、急に笑い出したりしながら形にしていきました。

発表の日、生徒たちは緊張の中でも自分たちの言葉で島の未来を語りました。地元の方々からの率直な意見に耳を傾け、具体的な実現に向けた話し合いが始まった案もありました。

今年は、沖縄北部三村(大宜味村・国頭村・東村)の地域創生に挑戦します。 チームで三村を訪れ、地域資源や特産品を活かしたブランディングや観光企画を考え、ジャングリア需要を取り込む仕掛けを検討していきます。

このプログラムを通して生徒たちが得るのは、課題解決の力だけではありません。地域の温かさや誇り、そして自分自身の強さと弱さ。沖縄の空の下で流した汗や学びの時間は、きっと彼らの中に長く残り続けることでしょう。これからも、若い挑戦者たちが地域と真剣に向き合い、悩みながら未来を考える時間を大切にしていきたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。