慶應義塾

福田 千晶:疲労回復を生活習慣から考える

公開日:2026.04.17

執筆者プロフィール

  • 福田 千晶(ふくだ ちあき)

    その他 : 健康科学アドバイザーその他 : 医師医学部 卒業

    1988医

    福田 千晶(ふくだ ちあき)

    その他 : 健康科学アドバイザーその他 : 医師医学部 卒業

    1988医

私は健康科学アドバイザーとして健康に関する講演や執筆の活動を行っており、医師として診察室で人間ドックや健康診断の受診者を1年に1万5000人ほど診ています。

いわゆる「患者さん」は、自覚症状があり自らの意思で医療機関を訪れます。しかし、人間ドックや健康診断の受診者は、病気を有する人もまったく元気な人も受診するので、よりさまざまな人を診て話を聞くことができます。

すると、その時々で気づくこともいろいろあります。受診者の勤務先の新入社員の傾向から求められている人材の傾向、景気の動向の予測、望まれる新商品などが窺われ、興味深いものです。

もちろん健康問題に関しても、その時期に増える悩みや自覚症状はあるのです。「疲れがとれない」という自覚症状はつねに多くの人が訴えますが、とくに秋から早春にかけて増える自覚症状や悩みと感じております。

理由はいろいろ考えられます。まず、昨年の夏の長い猛暑と急に訪れた冬の厳しい寒さがあるでしょう。気候の変化に、体が合わせきれずに疲労して回復しにくいと考えられます。

また、お正月休みが9連休だった人も多く、休み前は忙しく、休みの後は仕事のペースに体を戻すのにエネルギーを要したことでしょう。これも疲労の蓄積の原因になります。

コロナ禍の影響も大きいと推測されます。2020年からしばらくは多くの会議や会合が休止、友人や親類との集まりも減っていましたが、最近は完全復活。楽しいことも戻ってきましたが、気を遣うことや忙しさが増すなど疲れの原因が増えた人も多いはずです。

しかも、2020年から年齢を重ね体力は低下しているので、以前と同様のペースでは疲れる人もいるのです。リモートワークから出勤になり体が疲れる人、周囲の人に気を使い疲れる人、いろいろです。

生きていればさまざまな原因で生じる疲労、上手に回復して毎日を気持ちよく過ごしたいものです。そのためにはどうすれば良いでしょうか? 以下に疲労回復のための生活習慣改善のヒントを記しました。

睡眠を見直してみましょう

「睡眠は疲労回復の特効薬」とも言えます。疲労がとれない人に睡眠について質問すると、95パーセントくらいの人は「睡眠時間が足りていない」と答えます。必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7~8時間は確保したいものです。しかし、仕事をしている日本人のほぼ半数は、睡眠時間が6時間以下、多くの人で睡眠時間が不足していると言えます。

起きた時にまだ眠気がありスッキリしない人、起床時間を気にしなくて良い休日はいつもより2時間以上も遅くまで寝ている人、バタンキューで寝床に入ると瞬時に眠れる人、この人たちは睡眠が不足と考えられます。いつもバタンキューで眠れるのは良い睡眠かと思いきや、実は睡眠が慢性的に不足し、睡眠を強く欲しているためすぐに寝つけてしまうのです。

良い睡眠のために、夕食は食べすぎず、飲酒は控えめに内臓も早めに休息モードにしましょう。40度くらいのぬるめのお風呂に浸かってリラックス、スマホやパソコンを見ることはやめて「熟眠モード」にセッティング。そして、寝床に入って10~15分くらいはウトウトしていつの間にか眠っているのが望ましい眠り方です。

食生活はどうでしょうか?

もちろん栄養バランスのとれた食事を規則正しく摂ることも疲労回復には大切です。とくに、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1、さらにビタミンB1の吸収を高めて作用を助けるアリシンなどは疲労回復に効果的です。豚肉、レバー、ウナギ、豆類、胚芽米や玄米などはビタミンB1を含みます。香りの強いニンニク、ネギ、ニラなどはアリシンを含んでいます。レバニラ炒め、ニンニクをきかせた豚肉と野菜の炒め物などにスタミナ食のイメージがあるのも納得です。

動いて疲労が回復することも

人によって効果を得られる疲労回復法もあります。

まず「アクティブレスト」とも呼ばれますが、活動することで疲労がすっきり抜けることがあります。ウォーキング、スポーツ、ダンスなどで体を動かす、旅行やイベント参加、コンサートなどに出かけて楽しむことで疲労が癒され元気になることもあります。友人と会っていっぱい笑ったら、たとえ帰宅が遅くなってもエネルギーがチャージされる経験はあるでしょう。

学生時代に運動部だった人は、とくにこのアクティブレストが有効な場合が多いです。久しぶりにスポーツ施設で軽くトレーニングをすることなどもお勧めです。

「疲労」といっても、肉体の疲れ、頭の疲れ、心の疲れ、さまざまです。個人差もありますから、自分に合った疲労回復法を探してみましょう。お気に入りのカフェでゆったりと呼吸をしながら美味しい珈琲を味わうわずか15分間で疲れを忘れられることもありえます。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。