執筆者プロフィール

中村 太一(なかむら たいち)
その他 : 株式会社ベネクス代表取締役商学部 卒業2003商

中村 太一(なかむら たいち)
その他 : 株式会社ベネクス代表取締役商学部 卒業2003商
疲労というアラーム
健康のための3大要素は「運動」、「栄養」、「休養」と言われています。私たちはその中でも、とりわけ見落とされがちな「休養」に着目してきました。
その背景として、調査によると日本人の約8割が日々「疲れ」を感じています。医学的に、疲労は「熱」、「痛み」と並ぶ体の3大アラームでありながら最も自覚しにくく、放置すれば重大な疾患やパフォーマンス低下に直結する重要なサインです。私たちはこの現代社会の課題に対し、ただ受動的に「休む」のではなく、「積極的休養」を提唱しています。その結晶が、2010年2月に世界初のカテゴリーとして誕生した「リカバリーウェア」です。
介護現場の「床ずれ」を救うために
弊社の原点は、私の高校時代のラグビー大会で脳内出血により生死をさまよった経験にあります。「一度失いかけた命、全力で社会に役立てたい」という想いは、介護現場で直面した「床ずれ」解消への挑戦に繋がりました。
思うように動けない方の血流をいかに促すか。この「究極の安静状態」におけるリカバリーの追究が、ナノプラチナを用いた独自素材の開発へと結びついたのです。
PHT繊維という核
開発当初、表面に独自素材を使用した介護マットの展開で困難に直面しましたが、その素材を活かして試作したTシャツがゴールドジムのバイヤーの目に留まりました。ハードな毎日を送るアスリートの休養時間に寄り添うという需要を見出したことで潮目が変わります。核となったのは、ナノプラチナなどの鉱物を練り込んだ独自のPHT ( Platinum Harmonnized Technology)繊維でした。
この繊維には3つの特徴があります。①「極限の細さ」は髪の毛の約5分の1という細さまで磨き上げ、しなやかで圧倒的な肌触り・着心地を追究しました。②「休養環境へのアプローチ」は独自素材「DPV576」を含有した繊維が、身に纏うだけで質の高い休養時間をサポートし、心身を穏やかな時間へと導きます。③「永続的な機能」は特殊な技術で鉱物を繊維1本1本に練り込んでいるため、洗濯を繰り返してもその機能が損なわれることはありません。衣類としての使用耐久性は、一般的な衣類と同様です。中には「一般医療機器」の届出をしているものもあり、疲労回復、血流改善、筋肉のコリ等の改善の効果が期待できます。
世界が認めた科学的エビデンス
私たちは「実学」を重んじ、徹底した検証を続けてきました。神奈川県、東海大学との産官学連携を皮切りに、現在もUCLAやスタンフォード大学、筑波大学など国内外19の研究機関と連携しています。論文投稿や学会発表を積み重ね、2013年には世界最大級のスポーツ見本市「ISPO」で日本企業初の最高賞「ゴールドウィナー」を受賞しました。
トップアスリートの通うジムから始まった休養を支える挑戦は、その後も百貨店へと拡がり、健康意識の高い経営者、ビジネスパーソンや主婦層へと波及して累計販売枚数は240万着(2026年3月上旬時点)を突破しています。
リーディングカンパニーの責務
休養を支えるという新たな機能性を備えた製品に医療機器としての認定を得るべく、早期から厚生労働省へ相談を続けてきました。他方、2020年頃から医療機器ルールの誤認や不正確な表示が相次ぎ、市場が混乱していました。こうした状況を背景に、厚生労働省で「一般医療機器」という約42年ぶりの新カテゴリーが設けられました。
リカバリーウェア市場は次第に拡大し、現在癒しや休養を取るための選択肢がますます増えています。そうした中で皆様の健康で豊かな生活のために、当社はリーディングカンパニーとして、ユーザーが正しい価値を選択できる環境づくりに継続して取り組みたいと考えています。
「休養学」の提唱
健康もまた科学的根拠に基づく管理が必要です。私たちは製品の開発や普及だけでなく、休養を科学する「休養学」の啓発活動も行っています。休養というと睡眠が第1に想起される傾向がありますが、休養学では「休息」「運動」「栄養」「親交」など7タイプに分けられます。
多忙を極める現代人にこそ自身の休養・睡眠と向き合い、休養の質の向上、パフォーマンスの最大化を効率的に目指していただきたいと考えています。
世界のリカバリー市場を創造する
「世界のリカバリー市場を創造し、そこに関わる全ての人を元気にする」。介護現場という、回復を必要とする場所から生まれた私たちの技術は、今や海外にまで拡がり、幅広い層の人々に愛用される製品となりました。忙しい現代人の健やかな生活とパフォーマンスを確かに支えるためにさらなる挑戦を続けていきます。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。