慶應義塾

「積分表示」と「近似」の美しい世界

公開日:2018.08.09

   数学というと厳密な値を正確に求め、そこに美しさを感じる学問というイメージを持っていると思いますが、それを如何に計算するかということも問題です。しかし、厳密な値を何らかの問題で計算できない場合もあります。そこで近似値を出すのですが、近似値というからには真の値との誤差が評価されているはずです。これから述べたいことは、積分表示を使った近似と誤差評価にも数学のアイデアと美しい世界が広がっているということです。  

円周率   円周率 π は小学校では円形の筒の周りの長さを計って求めるのですが、これでは高い精度が期待できません。ギリシャ時代には円に内外接する正多角形の辺の長さからある程度の評価式が得られました。更に微積分が導入されてから、これから述べるような根本的に異なる近似方法が得られました。  

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破産確率   A 君の全財産は 100 円です。これからコインを投げて表が出ると 100 円取得し、裏が出ると 100 円失うゲームをします。全財産を失うとゲームは終了します。このとき、全財産を失わない確率を求めましょう。  

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まとめ   積分表示の有効性は上記の例をはるかに超えて、現代数学の至る所に現れています。また、数理物理学における(経路)積分表示を使った計算は驚くべきものです。一方、破産確率のように経済活動、日常生活に現れる問題にも応用することができます。但し、積分表示は中間目標のようなもので、その前に現れる状況の数式化、その後の数式の取扱いの両面を理解しておく必要があります。数学を学ぶとはそういうことです。