環境情報学部 教授 政策・メディア研究科委員 林 公輔
専門分野:精神医学、分析心理学(ユング心理学)、集団精神療法
研究会について(専門分野・活動内容)
私は精神科医・ユング派分析家として、精神療法や集団精神療法を実践しています。臨床場面での実践を重視しているので、慶應SFCの教員ではありますが、研究者というより職人というアイデンティティの方が自分にはあっていると感じています。
研究室のテーマは「回復(recovery)」です。回復というと病気や怪我からの回復をイメージすると思いますが、これに限らず、物語や宗教における救済や芸術活動における創造性も含めた広い範囲を射程にしています。
精神療法における回復とは単に症状がなくなることではなく、自分自身を本当に知っていく過程と深く関係しています。回復に至るプロセスは人それぞれ異なるものですし、セラピーの結果どのようなところに至るのかは始めないとわからない類のものです。「「こころの処方箋」は自分で探し出すより仕方ない」(河合隼雄『こころの声を聴く』)のです。約束された場所を目指すのではなく、未知の荒野へと歩みを進めることの先に、回復という現象が生起するのではないかと考えています。
教員から知識を受け取るだけではなく、学生一人ひとりが自分自身の関心や問いを大切にしながら、主体的に研究に取り組むことを重視しています。心や身体を通して学びを深めるため, 参加者が自分自身や他者をより知るための方法として集団精神療法を実践しています。他者と違う「私」を大切にしながら, 同時につながりが生まれるようなグループであったらいいなと願っていますが(このことを私は「バラバラのままつながる」と表現しています), でも同時に, 一遍上人が「念仏が念仏する」と言ったのと同じように, グループがグループする, 研究会が研究会する, その自律的なプロセスを大切にしたいと思っています。「何言ってんだかわからないけど, なんか気になる!」という方, ぜひ遊びにいらしてください。
今後, 以下のサイトで研究室の情報を発信予定です。
林研究会|note
研究会をひとことで表すと
研究会がどうなるか, それは研究会が決める。そのプロセスにコミットメントすることを大切に。
研究会の特色・学生へのメッセージ
「「こころの処方箋」は自分で探し出すより仕方ない」(河合隼雄『こころの声を聴く』)
治療者としての私にとって、患者さんが持ってくる主訴が治療・セラピーの出発点になります。それがなかったら、私は役に立つことができません。これと同じように、学生さんも何を学びたいのかという「主訴」を携えて研究会にいらしてください。心理学や精神医学の知識がなくても構いません。「人が回復するとはどういうこと?」「自分自身についてもっと知りたい!」といったことに関心のある学生さんを歓迎します。
学生の特徴
参加する学生たちの特徴や研究会の雰囲気は, 彼/彼女らの語りから感じてもらえたらと思います。
園田悠太君(総合政策学部4年)
研究テーマ: 日本のサークルや学生団体におけるリーダーシップ・アイデンティティの形成と引退後の変容
「研究会では、「回復」というテーマを軸に異なる考え方や価値観を持つ人と議論を交わし、考えを深めています。特に、自身のリーダーシップに関する研究テーマについては、異なる分野の方々からの意見やアドバイスを通じて考えを深めることができています。また、定期的にゲストスピーカーの方から貴重なお話を聞かせていただいています。新しい視点や発見が多く、とても有意義な学びの時間となっています。」
亀井理史君(環境情報学部4年)
研究テーマ:セルフ・ポートレイト研究
「林研は、林先生が精神科医ということもあり心理学の研究室と思われがちですが、それだけではありません。「回復」をテーマに、学生一人ひとりが自分の関心と結びつけながら自由に研究を進められる環境があります。やりたいことがあれば林先生が積極的に背中を押してくださるので、主体的に挑戦したい人にはとても魅力的な研究室です。」
田邉佑衣君(環境情報学部4年)
研究テーマ:まだ見返していない写真について―未来の自分へ向けて撮った写真を、今の自分が見返すとき―
「林研究会では、毎週集団精神療法を行います。そこでは、考えていることを話したい人から話しはじめ、聞かれても答えないという選択もできます。そういう環境が、私には不思議で、貴重に感じられます。」
稲森みなみ君(環境情報学部3年)
研究テーマ:迷い中、昨年は演じることの持つ力について考えました。
「自分というフィルターを通して、自分と他人とをじっくり考えることのできる研究会だと思っています。グループを通して思いつくままに話し、感じることで、違いを違いのまま受け取ったり、一見全く異なることのなかから自分に繋がるものを発見する貴重な体験ができます。」
Bi Yue君(環境情報学部2年)
研究テーマ:タロット占いにおける象徴的解釈が感情状態に与える影響
「私は大学2年生で、今年から林公輔研究会に参加しました。研究会というと文献講読や研究手法の分析を想像していましたが、実際はメンバー一人ひとりの感情や体験に耳を傾ける場でした。その時間は、誰かの人生の断片をオンラインで読んでいる感覚に似ています。心に残った一文を開くと、そこには他の読者の共感や異なる視点がある。私にとってこの研究会は、まるで人の人生を読むための読書アプリを現実にしたような場所です。」