慶應義塾大学医学部共同利用研究室(動物実験センター研究室)の蓮輪英毅専任講師、同医学部分子生物学教室の塩見春彦教授らと、九州大学の共同研究グループは、ゲノム編集技術をゴールデンハムスターに応用し、卵子に存在するPIWIタンパク質と20-30塩基長の非コードRNA (piRNA)が欠損すると受精後の胚発生に大きな障害が生じることを明らかにしました。
これまで哺乳動物におけるPIWI-piRNA経路は、雄の生殖細胞でのみ強く発現し精子形成に必須であることがPiwi遺伝子を欠損したマウスの解析から示されていました。ところが、マウスを除くほとんどの哺乳類は雌の生殖細胞でもPIWI遺伝子を強く発現しているため、ヒトでは卵子でも機能していることが推測されていました。本研究では、ヒトと同じように雌雄の生殖細胞でPIWI遺伝子を強く発現するゴールデンハムスターを用い、卵子およびその卵子由来の胚におけるPIWI遺伝子の機能を解明しました。
今回の研究成果は、(1)卵子および着床前胚におけるPIWI遺伝子と非コードRNA複合体による遺伝子発現制御とゲノムの構造変化の解明に加え、(2)新しいヒト疾患モデル動物としての遺伝子改変ゴールデンハムスターの確立につながることが予想されます。
本研究成果は、2021年9月6日(米国東部標準時間)に『Nature Cell Biology』のオンライン版に掲載されました。