慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程の巻内崇彦(研究当時。現 東京大学大学院工学系研究科ERATO齊藤スピン量子整流プロジェクト特任研究員)、理工学部の永合祐輔助教、白濱圭也教授らの研究グループは、水素分子の薄膜が極低温まで液体として保たれ、超流動寸前の状態にあることを発見しました。
超流動は金属の超伝導と同様に物質が低温で示す劇的な量子現象ですが、液体ヘリウムなどのごく限られた物質でのみ観測されていました。分子状水素(H2)は超流動を示しうる数少ない候補物質のひとつとして注目されてきました。本研究では水素薄膜の弾性測定から、薄膜の表面が絶対温度1ケルビン(摂氏マイナス272度)という極低温まで液体のように振る舞い、超流動寸前の状態にあることを発見しました。この成果は、水素がどの程度超流動に近づいたかを初めて定量的に示した点で画期的であり、高周波音波の印加などの新手法により超流動水素を実現する可能性を拓くものです。水素は宇宙や生命の成り立ちに重要なだけでなく、超高圧下では超伝導の発現も期待されています。超流動水素の実現は、水素の多様性の一端を示すだけでなく、科学の発展に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は2019年12月13日(現地時間)に米国の科学雑誌『Physical Review Letters』に掲載されました。
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