慶應義塾

小さな細胞の動きから、大きな治療の可能性をひらく

公開日:2026.05.26

放射線や抗がん剤でがん治療すると、なぜか「免疫」の働きが弱まってしまうことがあります。春名さんは、なぜ免疫の働きが弱くなることがあるのか、がん治療をより安全で確実なものにするため、そのしくみを細胞レベルで解き明かそうとしています。

登場者プロフィール

  • 春名 俊志(ハルナ シュンジ)

    薬学研究科 薬学専攻博士課程4年

    (2025年12月現在)

    春名 俊志(ハルナ シュンジ)

    薬学研究科 薬学専攻博士課程4年

    (2025年12月現在)

がん治療における免疫の変化を探る

がん治療では、放射線や抗がん剤を使ってがん細胞のDNAを壊し、免疫の働きを活性化させて体からがん細胞を排除します。ところが、ときに免疫反応が逆に弱まってしまうことがあり、その原因のひとつとして、免疫細胞であるマクロファージが免疫を抑えるタイプに変化してしまうことが分かっていました。

春名さんは、このふしぎな現象とDNAの損傷との関係を明らかにするため、放射線でDNAを壊したがん細胞の中で何が起きているのかを、遺伝子レベルでくわしく解析したところ、壊されたDNAを修復しようとする過程で働くしくみの一部が、免疫反応の調整に関わっていることを突き止めたのです。

今後、春名さんはDNAの損傷と免疫を抑えるマクロファージの出現との関係をさらにくわしく明らかにすることで、がん治療をもっと安全で効果的なものにしようとしています。

撮影:慶應義塾大学薬学部

しくみを知り、未来の治療をかたちに

「がんで苦しむ人を減らしたい」。祖父をがんで亡くした経験をきっかけに、春名さんは薬学部へ進学。

大学での実習で患者さんと向き合う中で、治療法の限界や医療現場の課題を実感し、研究の道を志します。「からだのなかで起こる現象やしくみを解明してこそ、どういう薬、治療法が有効になるのか、理由まで明確にすることができ、治療法の安心にもつながるのです」。

からだのなかで起こる現象を、細胞ひとつひとつの動きや、細胞どうしのコミュニケーションに注目し、仮説と検証を重ね研究をすすめています。「仮説どおりにならないからこそおもしろい」。そう語る春名さんの夢は、新しい治療法の提案をして現在の治療法をより改善すること。

「もっと多くの患者さんが恩恵を受けられるものにしたい」。未来の治療法を設計する。そこへ向かう一歩を、春名さんはこれからも確実に重ねていきます。


撮影:慶應義塾大学薬学部

Q.あなたにとって薬学とは?

A. 学び続けるその先に、誰かの力になれる瞬間がくる

春名さんが所属する子腫瘍薬学講座Webサイト 

*春名さんは2026年4月に分子腫瘍薬学講座の助教に着任しました。