慶應義塾

「老化」に挑み、 日本の活気を取り戻す。

公開日:2026.07.30

小学5年から中学3年までをシンガポールで過ごして帰国した私の目に映ったのは、シンガポールと比べて活気がないように見えた日本の姿でした。「このままでは数十年後には日本が世界の中で埋もれた国になってしまう。失われた数十年以前のように、再び世界の中で輝く日本を取り戻したい。」そのような思いが、現在の活動の原動力になっています。 「少子高齢化」という、時間が解決してくれることのない大きな社会課題を、科学の力による破壊的イノベーションによって、少子高齢化が問題であるという常識そのものから覆したい。そう決意して、慶應義塾大学薬学部への入学を選択しました。入学後は、クラウドファンディングにも挑戦するなどし、一日も早く老化を何とかするために、日々研究に励んでいます。

登場者プロフィール

  • 長谷川 敬章(ハセガワ ケイショウ)

    薬学研究科 薬科学専攻 修士課程1年

    *2026年3月現在

    長谷川 敬章(ハセガワ ケイショウ)

    薬学研究科 薬科学専攻 修士課程1年

    *2026年3月現在

(*途中、2026年6月の受賞情報を補足しています)

活気ある日本をもう一度。「老化」を疾患の根本原因と捉え、 細胞の時間を巻き戻す革新的技術の創出に挑む。

私が「抗老化技術」を研究テーマに選んだ背景には、シンガポールでの生活経験があります。10代前半の5年間を現地で過ごしましたが、経済発展に沸く東南アジアの熱気の中でも、私には「世界で輝く日本」への誇りがありました。しかし、高校入学時に帰国した空港で、日本の空気がどこかよどんでいて、かつての活気が失われているように感じたのです。

この国を覆う閉塞感の正体を自分なりに考え、それは少子高齢化によって未来に希望を持ちにくい構造的な問題にあると思い至りました。次に、多くの疾患の根本原因である「老化」そのものを制御できないかと考え始めました。従来の医療は発症後の「モグラ叩き」的な治療が中心でしたが、これからは病気を発症させない「予防医療」がますます重要になります。その鍵となるテクノロジーとして特に注目しているのが、iPS細胞の関連技術を応用した「部分的リプログラミング」です。これは細胞のアイデンティティは保ったまま、細胞の時間だけを巻き戻す技術です。老化を食い止め、定期的に若返らせることで免疫や認知機能を保ち、健康寿命を延ばす。この革新的な抗老化技術こそ、日本、そして世界を救うゲームチェンジャーになると考えています。

長谷川 敬章01

恵まれた環境で「大学でしかできないこと」に取り組む。

私が薬学の世界を選んだのは、人類が生きている限りその命を支える医薬品産業はなくならないと考えていますし、その医薬品産業を変えるテクノロジーこそが世界を劇的に変える可能性を持っていると考えているからです。そして、薬学部薬科学科(4年制)を選んだのは、「大学でなければできないこと」がしたい、自らの手で新しい技術を生み出したいと考えたからです。

実際、慶應薬学部で学んで感じたのは、ここは学生の主体性を尊重してくれる、すばらしい環境だということでした。特に私が所属する「薬物治療学講座」では、学生自ら提案したテーマに対しても、論理的な裏付けがしっかりあるのなら、先生は「やってみよう」と背中を押してくれます。学生のうちから自分のやりたい研究が自由にできている環境は、日本のアカデミアの中でも非常に恵まれていると思います。

▶ 薬学研究科薬科学専攻(長谷川さんは薬科学科卒業後、大学院に進学しています)

▶ 長谷川さんが所属している薬物治療学講座

長谷川 敬章02

自分のやりたいことを、どうすれば実現に近づけられるか。 その答えのひとつが、クラウドファンディングへの挑戦。

入学後、コロナ禍の影響もあって、いろいろなことについて考える時間がありました。大学1年生が終わる頃に、自分のキャリアや生き方について考え、「一度きりの人生を生きているからには、ただで死ぬわけにはいかない。自分がやるべきだと思うことを自らの手で実現する生き方がしたい。」という結論に至りました。大学2年生からは薬学の勉強とは別に、スタートアップにも興味を持ち始め、学内外の様々なビジネス関連のサークルにも参加しました。そこで、やりたいことを実現するには、いかに共感を呼び、人を巻き込めるかが重要であることを学びました。

この時の学びが、4年生の時のクラウドファンディングへの挑戦につながっていきます。『老化治療技術で「真に健康長寿」な世界を創りたい!』というテーマを掲げ、目標額を上回る120万円以上の支援をいただくことができました。この資金でナノポアシークエンサーという最新技術を導入し、生物実験とAI・情報解析を融合させた独自の実験系の構築を進めています。研究は、時につらいと感じることもありますが、自分の成し遂げたいことに向かって着実に前進していると感じる瞬間の喜びを噛みしめて励んでいます。自分にとって研究は、人類知の最前線を走る活動であると同時に、新しい科学技術で世界を変えるための道のりです。

▶ 長谷川さんのクラウドファンディング達成時のニュースはこちら

▶ 長谷川さんは本研究が評価され、2026年6月には第26回日本抗加齢医学会総会で優秀演題に選出され、優秀演題受賞講演を行いました。 また、学部長賞第66回リバネス研究費「&タウリン賞」正賞も受賞しています。  



長谷川 敬章03

どんなことを成し遂げたいのか。 自分の選択を「正解」にできるのは、自分自身しかいない。

受験生の皆さんは今、大学の名前や偏差値に関心が向いているかもしれません。私も高校時代はそうでした。しかし、大学に入り、研究や学外活動を通じて気づいたのは、世の中は「あなたがどこにいるか」ではなく、「あなたは何をしたいのか、そしてそのために何をしてきたのか」を評価しているということです。大学はそのための環境に過ぎません。慶應には、チャレンジ精神を持ち、勉学や研究に限らず、課外活動やスポーツなどにも積極的に取り組む学生が多くいます。私自身、そうした刺激的な環境に身を置くことで成長できていると実感しています。

大学では、自分自身で課題を見つけ、主体的に行動を起こすことが何より大切です。研究においても、自分で主体的に動かなければ一歩も前には進みません。たとえ失敗したとしても、その経験を糧にして前に進み続ければいい。自分の選んだ道を、自らの行動で「正解」にしていけばいいのです。受験には不安や焦りが付き物だと思いますが、自分がどういう道に進みたいか、どんな場所でどんな仲間と成長していきたいかを大切にして、皆さんが納得できる選択ができることを祈っています。