センター概要
生成AIを含むテクノロジーの加速度的発展によって、人間そのものが「イノベーション」される時代を迎えつつある。このように人間/マシンの境界が融解する状況下では、領域横断的コミュニケーションを通じて、「人間」とは何か、「尊厳」とは何かを徹底的に考え抜くこと、新たな倫理観に基づいた領域横断研究を推進し、社会においてトラストされる技術を広く実装していくことが求められる。慶應義塾大学には「実践的人間学」ともいうべき智徳(学知)の伝統があり、それにもとづいた豊富な研究蓄積もある。本センターは、その蓄積を中心にしつつ、外部の先端的科学技術研究も戦略的に融合させ、国際的にも卓越した研究の推進と、人材育成を行う。
2026年度事業計画
■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標
【設置目的】
・AI時代に「人間の尊厳とは何か」を深く探究する
・人文社会系リードの領域横断的研究を推進する→アカデミックな価値を社会に広げる
・学術界・産業界・市民社会の連携を図る
・沖縄科学技術大学院大学(OIST)や海外研究機関との強い連携を図る
【研究主題】
・本研究プロジェクトは、全体の土台となる総合研究・基礎ユニットと、「概念と歴史」「規範と制度」「科学と未来」という三つの柱から構成される。
・このうち基礎ユニットは、医学や工学、法律から歴史や文学まで、様々な専門領域の研究者が集まり、多彩な企業との協働を通じて、尊厳とは何かについて探究する。
・「規範と制度」ユニットは、アテンション・エコノミーの課題を乗り越える健全な情報空間を設計し、AI時代の主権国家や民主主義、法制度のあり方を検討する。
・「概念と歴史」ユニットは、哲学、倫理学、文学、美術史や文化史、思想史、感情史の観点から、「人間」や「尊厳」概念について総合的に研究する。
・「科学と未来」ユニットは、脳の仕組みを探究する自然科学と連携しながら「尊厳」の意味を問い、これからの時代に求められる新たなエビデンス・評価法の開発に取り組む。
・現在、これら4つのユニットに属する15のサブユニット(プロジェクト)が、相互に連関する形で活動を開始している。
【資金計画】
・センターの理念に賛同をいただいた企業や団体からの寄付金や共同・受託研究資金により運営しており、2025度は会員企業が12社になる見込み。
・これまでの活動を通して、賛同を示す企業がさらに増える方向にあるが、公的資金や経常費の獲得も視野に入れている。
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
【活動計画】
センターの持続可能な運営とそれを支える継続的な研究資金の受入れに向けて、各サブユニットの活動推進とその成果発信を次の二つの活動を軸に行う。
1. 情報的健康を軸とした活動
・宣言や提言を出し、協議体を設置し、国際連携と社会実装を実現していく。
・シンポジウムや研究会、成果物を通して世界へ発信する。
2. 尊厳の探究(AI社会における、「日常に息づく尊厳」 を探究)
・「AIと尊厳(仮)」講座を2027年度に設置し、尊厳の多様なあり方を言語化し、体系化する。
・「X(クロス)」を体現する場として、アカデミア、企業、学生が議論し、各サブユニットの知見を統合する場である、X Dignity Loungeを今後も継続する。
・2025年10月23日に創刊した、ジャーナル「FOCAL」を年に2回更新し、「尊厳」をめぐる価値を考究する対話の場とする。
<2026年度>
・センターが目指す理念実現に向けた取り組みを実施し、一定の認知・地位獲得を目指す。具体的には、アニメ平和学などの寄附講座の開講や、「脳の仕組みと社会病理」プロジェクトのサーティフィケーションモデルの拡大により、成果の社会実装を加速させる。さらに、「情報的健康」にフォーカスしたユニット横断的な取り組みの強化を、国際連携の推進とともに行う。
<2027年度>
・引き続き2026年度の活動を発展的に継続させる他、キャンパス横断の「AIと尊厳(仮)」講座を開講し、AIシステムが直面する課題について、領域横断的な知見から探究する力を養う、新たな教育モデルの提唱を目指す。
<2028年度>
・前年度の成果をもとに、教育機能の充実とパブリックリレーションズの強化を目指す。また総括として、「情報的健康」の国際連携をインドや韓国、台湾、欧米の研究者仲間と発展させ、国際的な共同提言を発表する。
2025年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
2025年度は、スタートアップセンターの2年目として、本格的な研究活動を開始した。また、センターの持続可能な運営・発展や継続的な研究資金の受入れに向けて、各種取り組みの推進や研究支援体制の強化を行った。
【センター全体の研究活動】
・ AI時代の「人間の尊厳とは何か」を探究するため、X Dignity Loungeを開催し、産学がX(クロス)して議論する場を設けた。
・ 人文社会系リードの領域横断的研究を推進し、アカデミックな価値を社会に向けて発信した。
・ 学術界・産業界・市民社会との連携を推進し、アカデミアから社会への知の還元を図った。
・ 沖縄科学技術大学院大学(OIST)や海外研究機関との国際連携を強化した。
・2026年度に 「Netflix寄附講座アニメ平和学-日本のアニメで「平和」をつくる―」を開講するために研究会を開催した。
【各ユニットの研究活動】
・ 基礎ユニットは、医学や工学、法律から歴史や文学まで、様々な専門領域の研究者が集まり、多彩な企業との協働を通じて、尊厳とは何かについて探究した。
・ 「規範と制度」ユニットは、アテンション・エコノミーの課題を乗り越える健全な情報空間を設計し、AI時代の主権国家や民主主義、法制度のあり方を検討した。
・ 「概念と歴史」ユニットは、哲学、倫理学、文学、美術史や文化史、思想史、感情史の観点から、「人間」や「尊厳」概念について総合的に研究した。
・ 「科学と未来」ユニットは、脳の仕組みを探究する自然科学と連携しながら「尊厳」の意味を問い、これからの時代に求められる新たなエビデンス・評価法の開発に取り組んだ。
・ 2025年度は、これら4つのユニットに属する15のサブユニット(プロジェクト)が、相互に連関する形で活動を開始した。2026年度は、サブユニットが17個に増える予定。
【研究資金】
・ センターの理念に賛同をいただいた企業や団体からの寄付金や共同・受託研究資金により運営しており、2025年度は会員企業が10社に増加。これまでの活動を通して、賛同を示す企業がさらに増える方向にある。
・ 公的資金も採択されており、今後も獲得予定。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
【2025年度の活動概要】
・ X Research Studio(シンポジウム・研究会)の開催数:43件
・ X Dignity Lounge(産学連携イベント)の開催数:3件
・ アドバイザリーボード会議の開催:2回
・ X Media(ジャーナル)の発行:2回
・ 提言の公表:2件
・ 外部メディア掲載:43件
□シンポジウムの開催(他8件)
・ オードリー・タン氏とグレン・ワイル氏共著「PLURALITY」日本語版発売記念イベント(2025年5月10日、東館ホール)
・ 規範と制度ユニットによるシンポジウム「パブリックヘルス(公衆衛生)の現代的課題を考える」(2025年7月1日、東館6階G-Lab)
・ X Dignityセンター主催シンポジウム「データ駆動社会におけるプライバシー保護の重要性― どのように⼈間の権利と尊厳を守るのかー」(2025年8月20日、東館ホール)
・ Originator Profile 技術研究組合・慶應義塾大学 X Dignity センター共催シンポジウム「インターネットを健全な空間にするために」(2025年10月27日、東館ホール)
・ IoB-S国際シンポジウム「Neurolaw in Action: Neurotech and ELSI in the Global/Asian Contexts」(2025年11月8, 9日、東館ホール)
□研究会の開催(他2件)
・ 持続可能な社会の発展と民主的なガバナンス(8回開催)
・ 尊厳と人権の哲学的・倫理学的探究(4回開催)
・ 概念の具象循環史―「思考の手触り」を復権する試み(2回開催)
・ 雇用・労働における「尊厳」とAI(4回開催)
・ ライフコースの再想像(2回開催)
・ アニメ平和学(2回開催)
・ 脳の仕組みと社会病理(全16回の講義とワークショップ)
・ 贈与経済2.0:社会実装を基礎にした未来社会のデザイン(1回開催)
・ 芸術における自律性と公共性(2回開催)
・ Lecture Series(2回開催)
□X Dignity Loungeの開催
・ 第1回 遊びと人間の尊厳ラウンジ 〜「遊び」を哲学する!〜(2025年6月10日、北館ファカルティクラブ)
・ 第2回 遊びと人間の尊厳ラウンジ 〜dignitas bar 哲学で夜遊び〜(2025年9月4日、北館ファカルティクラブ)
・ 第3回 遊びと人間の尊厳ラウンジ 〜芸の継承と尊厳 「間」はAIに伝わるか〜(2026年3月24日、CRIK信濃町)
□アドバイザリーボード会議の開催
・ 第2回アドバイザリーボード会議(2025年10月23日、東館ホール)
・ 第3回アドバイザリーボード会議(2026年3月2日、東館G-lab)
□X Media(ジャーナル)の発行
・ 第1号ジャーナル「FOCAL」(2025年10月23日発行)
・ 第2号ジャーナル「FOCAL」(2026年2月27日発行)
□提言の公表
・ AI時代の報道機関のあり方に関する提言(2026年1月26日)
・ HRテクノロジーにおける「尊厳」論の確立に向けて(2026年2月)
□外部メディア掲載
・ NHK総合「ニュース」
・ 日本テレビ「news every.」
・ 読売新聞
・ 読売新聞「THE JAPAN NEWS」
・ 朝日新聞
・ 毎日新聞
・ 日本経済新聞
・ 時事通信、岩手日報、福井新聞、信濃毎日新聞 等
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
「情報的健康」を軸としたセンター活動を展開し、2026年1月26日に「AI時代の報道機関のあり方に関する提言」を公表した。また、提言の社会実装を見据え、有識者による協議体設置に向けた具体的な検討および準備を進めた。
更に、アカデミア・企業・学生や領域横断研究の知見を統合し、「X(クロス)」を体現する場として、「遊びと人間の尊厳ラウンジ」を開催した。ラウンジでは、AI社会における「日常に息づく尊厳」 を探究し、アカデミアから社会へ知の還元を行うことができた。
2025年度は、センターの今後の展開に向けて多様な取り組みを実施し、一定の認知・地位を獲得した。
2024年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
本年度はスタートアップセンターとしての設立初年度であり、以下のとおり、来年度以降本格的に活動を開始するための準備を行うことができた。また、一部の研究サブユニットについては具体的な研究活動を開始することができた。
研究組織の構築、研究計画の立案
7月1日にセンターを設立し、現時点で、4つの研究ユニットが構築され、その下に合計12つのサブユニットが設置された。
現在、学部・研究科や専門分野の垣根を越えて、約20名の兼担教員がセンターの所員として集結し、来年度の開始に向けて、実質的な研究活動を行うための準備をしている。また、慶應義塾外とのX(クロス)により、幅広い知見や価値観を研究に導入するため、来年度以降、訪問教員及び共同研究員(計20名~30名程度)の受入れを実施するため、必要な手続等を行っている。
その他、研究組織として適切なガバナンス体制を整えるため、学術研究支援部等と密な連携を図りながら、センター内規の制定、運営委員会の設置・開催(今年度は5回実施)及び事務局体制の強化(今年度は臨時職員3名)を行った。
研究資金
センターとして、本年度、以下の研究資金の受入れがあった。
A)寄附金 5件(計1,850万円)
B)受託研究 1件(計500万円)
C)共同研究 2件(計1050万円)
また、現在、複数の企業等との間で、新規の寄附金の受入れや受託・共同研究の実施に向けて協議を行っている。
センター独自の取組みに向けた準備
センターが社会と大学の交差点となるため、センター内に設置されたブリッジング・オフィスを中心に、各種イベント(X Dignity Lounge・X Reserch Studio)や出版(X Media)を開始するための企画や準備を行った。
具体的な研究活動の開始
KGRI2040独立自尊プロジェクト<安全>の一部を承継した「アテンション・エコノミーと情報的健康」サブユニットでは、昨年度に実施されたシンポジウムにおける研究成果を取りまとめたWorking Paperを公開するとともに、国際シンポジウム(12月21日)を開催すること等を通じて、海外機関との研究連携を開始するための準備を行っている。
また、基礎ユニット、「概念と歴史」ユニットや「民主的ガバナンス」サブユニットにおいては、キックオフ会議を開催し、来年度以降の詳細な研究計画の立案、研究構成員間の役割分担などを決定することができた。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
【センター全体】
論考:山本龍彦「大学における科学技術と人文知の交差--X Dignityセンター設置の背景」三田評論8・9月合併号(慶應義塾、2024年)
シンポジウム:「"X Dignity"の意義と実践-AI時代のいま、尊厳を問い直す」(2024年10月3日、東館ホール)
講演会:韓国・延世大学 ハム・ジハク教授「韓国憲法学における人間の尊厳をめぐって」(2024年10月21日、南館ディスタンスラーニング室)
対談:(調整中)(2025年3月16日実施予定、北館ホール)
【「アテンション・エコノミーと情報的健康」サブユニット】
Working Paper:鳥海不二夫=山本龍彦『共同提言「健全な言論プラットフォームに向けて ver2.1―情報的健康を、実装へ」』(KGRI Working Papers, 2024)
シンポジウム:「『情報的健康』を、日本から世界へー国際連携によるデジタル空間健全化への駆動ー」(2024年12月21日、北館ホール)
対談:「《情報的健康》特別対談(仮)」(2024年度中に第1~2回を収録・YouTube等で公開予定)
【その他】
シンポジウム(共催)「Cultures of youth mental health in East Asia, North America, and the UK」共催(2025年1月23日~25日、シカゴ大学香港キャンパス)
シンポジウム(共催)「医療と人文社会科学の架橋に向けて39:神経科学と予防医学の人類学」共催(2025年2月24日~25日、G-Labほか)
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
センター内部における研究計画・活動計画と並行して、社会の声をセンターに取り入れるための活動ができたのは、卓越した成果であった。特に、10月3日のシンポジウムでは、Google DeepMind社のアンナ・コイヴニエミ氏、株式会社読売新聞グループ本社代表取締役社長の山口寿一氏、LINEヤフー株式会社代表取締役会長の川邊健太郎氏にそれぞれご登壇いただき、それぞれの視点からみた現代社会の問題点、これからの時代における「人間」の在り方について議論することができた。また、2月12日に実施された第1回アドバイザリーボード会議では、計10名のアドバイザリーボード委員に対し、今年度のセンターの活動成果と来年度の活動計画の報告を行い、委員からは、両者に対して多数の貴重なご意見等をいただいた。これらの結果は、来年度以降の研究計画・活動計画に速やかに取り入れられる。
センターオリジナルWebサイト
設置期間
2026年4月1日~2029年3月31日
(スタートアップセンターとしての活動期間:2024年7月1日~2026年3月31日)
