慶應義塾

ヘルスコモンズセンター

公開日:2025.06.30
KGRI

センター概要

「ヘルスコモンズセンター」は、ウィズ・ポストコロナ時代を見据えつつSDGsに基づく未来のあるべき社会像(ビジョン)を共有し、その実現に向け学内外のアカデミア間の文理横断的研究連携、産学連携による企業・金融機関などとのイノベーション誘発、自治体との地域課題解決に向けた連携によりビジョン達成に向けた共同研究体制を構築し、産学官民による共創の場として機能する。

ビジョンからバックキャストによる課題の抽出、研究開発目標の設定と実施、研究成果の社会実装による社会システムの変革をセレンディピティとイノベーションを誘発しつつ実現していくことを目指す。具体的には、人々の暮らしや健康を支えるデジタル技術(ヘルスケア・医療・介護データ等)、テクノロジーにサイエンスが融合する「サイエンスナレッジ・データ基盤」を整備し、その利活用による異分野融合研究と、創出された新技術の社会実装を通じ、誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点の構築に取り組む。

2023年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

本事業はJSTのCOI-NEXT事業として10年間の事業期間をもって推進される。本事業ではセンター運営会議(議長:伊藤公平塾長)による全体計画・年度計画に関する審議を経てJSTの承認を得て進められている。2023年度4月からは本センターとして、引き続きこの計画に沿ってセンター活動が推進される。センターの目標は「誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点」というビジョンの達成である。

■2023年度の新規活動目標と内容、実施の背景

2023年度においても、COI-NEXT事業における全体計画書・年度計画書に基づき、センター運営会議の下で適切に実施される。特にバックキャストに基づくプロジェクト運営の仕組みを充実させるとともに、センターにおける研究成果の社会実装と組織の自走化を目指した機構づくりを進める。また医療データ等を用いた共同研究組成の仕組みとして整備されているショーケースの運用を本格化させるとともに、研究に必要データ基盤の整備を進める。

2022年度事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

【活動計画】

ウェルビーイングを実現する社会システムデザインの構築

・社会構造の変化によって都市に顕著な「孤立しがちな個人」及び「後病に関する個人や家族の負担と社会的損失」に着目し、誰もが参加し繋がることでウェルビーイングな暮らしを実現できる都市型共生社会を目指すというビジョンを目指した社会システムの全体像をSDGs実現へ向けた取り組みとして描き、適切な設計・調整を行う。

ウェルビーイングを共創するサイエンスナレッジ・データ基盤(SKD基盤)の整備

・後病者の治療中の医療情報、治療後の日常生活情報、もしくは介護情報を同意のもとに取得、統合し、さらにそこにアカデミアが持つサイエンスとテクノロジーが融合する研究開発用サイエンスナレッジ・データ基盤を、アカデミア(医療機関を含む)、企業、自治体が連携して構築し、運用する。

一人ひとりに寄り添うメディカル・ヘルスケア・介護の実現

・健康寿命延伸の観点から、発病後の余命が長く生涯を通して付き合っていく必要のある疾患や、後遺症等の影響が大きく医療・介護従事者等が寄り添っていく必要が大きい疾患を対象として、医療情報に基づくリスクの層別化と日常生活における個々の状態が定量化されたデータを融合することにより、リスクに応じた個別化サービスの開発を行い。アカデミア、企業、自治体が連携して社会実証を行う。

産学共創システムの構築

・慶應義塾大学において本センターを中核として首都圏のアカデミア4機関、企業、自治体から市民までを巻き込んだ産学官民共創システムを設立・運営し発展させ、大学を起点とした知の好循環、資金の好循環、人材の好循環を実現するため、アカデミアの知に基づく未来社会のデザインとバックキャストによる社会価値創造を進める。また本センターの取り組みを社会システムとして持続可能な仕組み・組織として構築する。

【成果】

  1. システム仕様を決定し、研究開発用SKD基盤の運用を開始した。('22/10~)

  2. SKD基盤を活用した研究活動を充実させるため、様々なステークホルダーからデータ・シーズを集め、マッチングする仕組みである"ショーケース"の運用を開始した。('22/10~)

  3. 企業6社、SU3社と研究成果の社会実装に向けた共同研究を検討中である。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

・論文数:公刊論文数2件(『Journal of the American Heart Association』、『国際政治208号』)、書籍掲載論文数1件(『先進医療NAVIGATOR医療とAI最前線』)

・学会発表数:招待講演56件(国内52件・国際4件)、口頭発表22件(国内21件・国際1件)、ポスター発表1件(国内1件)

・その他の成果発表2件(書誌掲載)

・イベント等の実績

-2022/8/20 「ヘルスコモンズセンター 夏フェス」(バックキャストワークショップ)、慶應義塾大学北里講堂、参加60名

-2023/2/16 「折り返し地点に立ち、SDGs達成プロセスの加速へ向けて」(学術交流)、六本木アカデミーヒルズオーディトリアム、参加約200名

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

センターは研究開発課題1~7と産学連携・社会連携を進めるマネジメント部門で構成されている。2022年度の成果は以下のとおり。

[マネジメント部門] マネジメント体制を再構築し、企画や人材育成等の機能を強化するとともに、事業で求められるバックキャストの仕組みを検討した。

[課題1]本センターが目指す「後病者・生活者一人ひとりに寄り添う共創の場」の社会システムにおける価値循環設計や機能階層の整理を行い、多様なステークホルダーの意見を可視化し議論を促進させた。中核となる後病者・生活者への寄り添い機能の分析手法を選定した。

[課題2]オープンサイエンス・データプラットフォーム、AI解析プラットフォームの実装を目指したサイエンスナレッジ・データ基盤の開発と仕様の設計を行い、データ解析基盤のプロトタイプを実装した。

[課題3]「うつ病になっても日々寄り添う研究」は慶應大学IRBより倫理承認を受け、共同研究機関と連携し研究用のデータベースや研究システムを構築した。直後より被験者リクルートを開始し2022年12月までに40名の被験者の同意を得た。

[課題4]「認知機能の状態像と生活課題・Wellbeingとの関連」はIRBより倫理承認を得て被験者リクルートを開始した。「生体信号・デジタル情報と機械学習による状態像の推定」では産学連携で研究内容についての協議を推進し、研究計画の作成に着手した。

[課題5]「脳卒中になっても日々寄り添う研究」でヘルスケアデータとPHRを集約的に管理するシステム整備、遠隔診療データ(植え込み型心電図)と病院内EMRを統合するシステム構築を行った。「心房細動検診」の社会実装を目指し自治体と連携しFeasibility研究を開始した。

[課題6]「質の高い永続的な包括的心臓リハビリテーションが可能なシステムの構築」の一環として汗乳酸センサーを用いて医師主導治験を実施し、薬事承認を申請した。また心不全に特化した運動支援プログラムを開発し、治験デザインを構築した。

[課題7]共創の場の社会システム全体としてSDGsを達成することを目標として、SDGsの観点から課題6に働きかけ関連と解決策を提示した。目指す社会システムの環境・社会・企業統治のスコアリング指標を整理し、可視化した。

センター オリジナルWebサイト:

設置期間

2023/04/01~2028/03/31

メンバー

プロジェクトメンバー

研究代表者

中村 雅也

教授医学部整形外科、脊椎脊髄外科、脊髄疾患の外科的治療、神経科学(脊髄再生、栄養因子)

天谷 雅行

常任理事/教授慶應義塾/医学部皮膚科学

北川 雄光

常任理事/教授慶應義塾/医学部消化器外科学