慶應義塾

OIST-Keio Showcase Talk Series vol.12 “Workshop on the Neural Basis of Democracy”開催

-民主主義を支える人間の脳・心・社会のメカニズムを探究

公開日:2026.06.30
広報室

6月26日(金)、慶應義塾大学X Dignityセンターと沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らは、民主主義を支える人間の認知・神経機能、社会的行動、数理的メカニズムについて、人文社会科学と自然科学の領域を横断し、多角的に議論するワークショップ「OIST-Keio Showcase Talk Series vol.12 “Workshop on the Neural Basis of Democracy”」を開催しました。

本ワークショップには、神経科学、認知科学、法学、社会科学、数理物理学など、異なる専門領域を持つ研究者・学生が参加し、「民主主義とは何か」「人間はいかに集団として意思決定を行うのか」「科学技術の進展は民主社会にどのような影響を与えるのか」といった問いについて活発な意見交換が行われました。

冒頭では、民主主義の哲学的・歴史的基盤について議論が行われ、近代民主主義の成立過程における理性、公共性、他者との協調の重要性が取り上げられました。また、SNSやデジタルプラットフォームにおける情報環境が、人々の感情的反応や社会的分断に与える影響についても問題提起がなされました。

続いて、神経法学や、ニューロポリティクス(脳・認知科学の知見から政治や社会を捉えるアプローチ)の観点から、脳科学や認知科学の進展が社会制度や権利保護に与える影響について考察。精神的プライバシーや認知的自由といった新たな権利概念の重要性が指摘され、科学技術の発展に対応した法的・倫理的枠組みの構築について議論を深めました。

さらに、神経科学的手法を用いた社会的行動の研究、神経経済学による合意形成メカニズムの解析、強化学習や数理モデルを用いた集団意思決定の研究など、幅広い研究成果が紹介されました。個人の意思決定から集団の協力形成、社会規範の維持に至るまで、民主主義を支える仕組みを科学的に理解するための新たなアプローチを共有しました。

また、AIによる集合的判断支援やオンラインプラットフォームを活用した民主的意思決定の可能性についても議論が行われ、情報技術が民主主義に与える影響と、その設計における倫理的課題について意見が交わされました。

総合討論では、民主主義という複雑な現象を理解するためには、単一の理論や方法論に依拠するのではなく、人文学・社会科学、神経科学、数理科学などの知を結び付けることが重要であるとの認識が共有されました。

本ワークショップを通じて、民主主義を「人間の脳・心・社会が生み出す集合的な営み」として捉え直す学際研究の可能性が示されました。今後も、参加研究者間の継続的な交流を進めるとともに、慶應義塾大学X DignityセンターとOISTの連携を通して、より広範な研究交流・シンポジウムの開催を予定しています。

ワークショップの様子
ワークショップの様子