慶應義塾

標準必須特許(SEP)グローバル・ワークショップ開催報告

公開日:2024.04.02
広報室

2024/04/02

慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)は、3月18日、活動11年目を迎えるSEP(標準必須特許)研究会との共催で、国内外から標準必須特許(SEP)に関する専門家をお迎えし、「標準必須特許(SEP)グローバル・ワークショップ」を実施しました。本ワークショップは、産官学界の第一線で活躍する専門家から学生まで多様な参加者を迎え、最先端の講演と活発な質疑応答が行われました。

左から松永氏、池田氏、島田氏、譽田氏、Zigann氏、二又氏、紋谷氏、君嶋氏、吉岡(小林)氏

Zigann判事による基調講演では、イタリア、フランス、オランダ、ドイツの各国裁判所における近年のSEP訴訟に関する判例の蓄積を紹介し、また、昨年発足したUPC(統一特許裁判所)に係属している事件及び今後判断されると思われる付託質問について解説がありました。さらに、欧州議会で承認された欧州委員会のSEP規則案とその問題点について分析しました。そのうえで、SEPに関する訴訟の性質やEUにおけるSEPを巡る係争の展望について見解を述べました。

基調講演風景:Zigann判事

本ワークショップでは、君嶋教授による開会挨拶、経済産業省・猪俣氏による来賓挨拶に続き、まず、松永弁護士が、EUの動向のほか、イギリス、中国、インド、ブラジルの最新動向を概観しました。

開会挨拶:君嶋 祐子 教授
猪俣知的財産政策室長による来賓挨拶
松永弁護士によるSEPの最新動向の概観
日本語で要約する紋谷弁護士

続いて、Cohen氏は主に中国の裁判所における司法戦略を、島田氏は中国が整備を進める国家戦略と中国企業の動向を整理しました。

Mark Cohen氏のオンライン講演
中国の動向について講演する島田氏

また、池田弁護士の講演では、ライセンス交渉の場面における競争法活用の可能性が示唆され、譽田氏の講演では、日本企業としての実務と現状を紹介したうえで、日本企業の課題とその対策が明らかにされるなど、日本国内のSEPを巡る環境に対する分析・問題提起もされました。

競争法について講演する池田弁護士
産業界から譽田氏の講演
質疑応答での議論:二又 俊文 SEP研究会座長

近年はIoT技術の発展により、異分野間のライセンス交渉が増加しています。異なった風土を持つ異業種間のライセンス交渉での両者の溝は、より一層深いものとなります。このような状況において、利害が対立するライセンス交渉を予見可能な形で安定的に調整することのできるルールメイキングをするためには、グローバル社会の産官学界との調和が極めて重要です。そのために、今後も、世界動向を常に注視し、各国と対話を続ける必要があります。こうしたなか、SEPを巡る動向が国内外の専門家からグローバルな視点をもって提供された本ワークショップは、大変有意義なものでした。

<プログラム>

■開会挨拶

君嶋 祐子(慶應義塾大学法学部・大学院法学研究科教授、KGRI所長、サイバーフィジカル・サステナビリティ・センター(CPSセンター)代表)

■来賓挨拶

猪俣 明彦(経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室長)

■講演「この一年の世界SEP訴訟動向」

松永 章吾(ゾンデルホフ・アインゼル法律特許事務所 パートナー・弁護士・弁理士)

■基調講演(英語)「EUにおけるSEP訴訟-最近の動向」

Dr. Matthias Zigann (欧州統一特許裁判所(UPC)ミュンヘン支部判事、ドイツ・ミュンヘン高等裁判所第38民事部(知的財産)部総括判事)

※日本語による概要の説明:紋谷 崇俊(西村あさひ法律事務所 弁護士・弁理士・NY州弁護士)

■講演(英語)「中国は国際的規範定立者となるか―米国から見た中国の進化するSEPポリシー」

Mark Cohen(元カリフォルニア大学バークレー校 法と技術バークレーセンター (BCLT) アジア知財プロジェクトディレクター)

※日本語による概要の説明:二又 俊文(SEP研究会座長・東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員)

■講演「中国の知財強国への道〜国家知財施策と中国企業動向」

島田 英昭(独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)香港事務所 知的財産部長)

■講演「競争法とSEP」

池田 毅(池田・染谷法律事務所 代表パートナー・弁護士)

■講演「SEPを巡る諸問題について日本企業における活動を通じた考察」

譽田 裕丈(日本電気株式会社知的財産部門 渉外統括部長・弁理士)

■クロージング

二又 俊文

*司会・吉岡(小林)徹(一橋大学イノベーション研究センター講師)

共催:

・SEP研究会

・慶應義塾大学知的財産フォーラム

後援:

経済産業省、特許庁、一般社団法人日本知的財産協会(JIPA)、一般社団法人日本国際知的財産保護協会(AIPPI Japan)、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)

日時:2024年3月18日(月) 13:00~18:00

会場:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎5階ホール

言語:英語・日本語  ※同時通訳無し、英語の講演は日本語で要約

※所属・職位は実施当時のものです。

撮影:竹松 明季