慶應義塾

文化財「弘法大師像」の修復事業

公開日:2022.07.29
広報室

2022/07/29

慶應義塾は創立当初から様々な形で集められた文化財を多数所蔵、管理しています。センチュリー文化財団から、2009年2月に一部のコレクションを寄託、2021年3月には全コレクションの寄贈を受け、書跡、絵画、金工、漆工、彫刻等、2,325件にのぼるセンチュリー赤尾コレクションが仲間入りしました。現在、その中のひとつ、「弘法⼤師像」(鎌倉時代、AW-CEN-001854-0000、慶應義塾(センチュリー⾚尾コレクション))の修復を実施しています。この修復事業は、公益財団法人出光美術館、公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人住友財団の3者より助成を受けています。

修復作業のため仮貼りされている「弘法大師像」

今回の修復対象である「弘法⼤師像」が制作されたのは鎌倉時代・嘉禎(かてい)四年(1238年)。作品左下には「嘉禎四年 戊戌正⽉⼗⼋⽇ 僧 厳海」という銘記があります。厳海(ごんかい・1173-1251年)は鎌倉時代前期に活躍した真⾔宗僧侶で、鎌倉幕府四代⽬征夷⼤将軍・藤原頼経を⽗に持つ⼈物です。本作制作年と同年の歴仁元年(1238年)に厳海は東寺三⻑者に叙せられた⾼僧でした。以上のように貴重な本作ですが、折れ、画絹の欠失、旧補修の不具合、汚れやカビ、糊離れなど損傷が進んでいたため、株式会社 修護に依頼し、東京文化財研究所内で修復作業が行われることになりました。

2022年~2023年の2年間にわたる修復作業中には慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)のスタッフが東京文化財研究所を複数回訪れ、技術者と修理に関する細かい打ち合わせを行います。2022年7月に行われた打ち合わせ内容は、過去の修復で補われた絹(旧補絹)の取り扱いや肌裏紙(はだうらがみ)の色味、表装裂(ひょうそうぎれ)の色柄について等、多岐にわたりました。肌裏紙は絵が描かれている紙の裏にあてられる紙のことで、色が透けるため、作品の印象に大きく関わります。表装裂は絵を囲む織物です。今回は新調する予定であるため、修復後の絵のトーンを想像しながら選ぶ必要があります。このように、修復作業過程には多くの判断を求められますが、科学的な修理といえるのか、客観的に判断できているか、修復に関わるすべての人が真摯に作品に向き合っています。

打ち合わせの様子(左より、KeMCoスタッフ、林温名誉教授、修護スタッフ)
補絹取り扱い検討の様子
肌裏紙の色味検討の様子
表装裂の色柄検討の様子

撮影:岸 剛史