今月のサイエンス - 2024年05月
Nat Biotechnol.
Fabian P Suchy #, Daiki Karigane #, Yusuke Nakauchi, Maimi Higuchi, Jinyu Zhang, Katja Pekrun, Ian Hsu, Amy C Fan, Toshinobu Nishimur, Carsten T Charlesworth, Joydeep Bhadury, Toshiya Nishimura, Adam C Wilkinson, Mark A Kay, Ravindra Majeti #, Hiromitsu Nakauchi #
CRISPR/Cas9とアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いた遺伝子編集は、1)標的遺伝子座の編集特異性の高さと、2)遺伝子治療関連細胞(造血幹細胞やiPS細胞)での高い編集効率などの理由から、実臨床の遺伝子治療に応用されています。私たちは今回、標的遺伝子座に複数のAAVが連結して挿入されることで、誤った遺伝子編集が生じることを見出しました。こうした連結挿入は遺伝子の改正ではなく欠損をもたらし、その細胞あたりの発生頻度は約60%と高確率で、さらには一般的なPCRでは検出できないなど、複数の問題を抱えることも分かりました。そこで私たちは、sgRNAで切断する標的遺伝子座と同一配列をAAVに組み込むことで連結挿入の原因となるITRを切り離し、連結挿入の頻度を5%未満にまで減少させることに成功しました。非常に単純な解決方法であるため、基礎研究から臨床応用まで幅広くこの知見が活用されることが期待されます。本研究は私の所属するMajeti Labと、臓器再生研究を行っているNakauchi Labとで共同で行いました。この場を借りて関係者の皆さまに御礼申し上げます。
(スタンフォード大学(現:東京医科歯科大学血液内科) 雁金大樹 87回)
2: Physician Estimates and Patient-Reported Health Status in Atrial Fibrillation
JAMA Netw Open.
Nobuhiro Ikemura, Shun Kohsaka, Takehiro Kimura, Philip G. Jones, Yoshinori Katsumata, Kojiro Tanimoto,Ikuko Ueda, Seiji Takatsuki, Masaki Ieda, Paul S. Chan, John A. Spertus
心房細動は成人で最もよくみられる不整脈であり、動悸や息切れのなどの症状により患者さんの健康状態を大きく害することが知られています(身体活動度や生活の質を損ない、 疾患・治療に対する不安感を生じる)。こうした個人の健康状態の把握は適切な治療法を選択する上で重要と考えられており、そのためにまさに医師は問診を行います。しかし、実際の診療現場では時間の制約や患者の遠慮などにより、医師が正確に認識できていない可能性が指摘されていました。そこで我々は、そこで我々は、東京医療センター(谷本医師ら)ならびに Mid-American Heart Institute(Spertus 医師ら)と協力し、心房細動患者の健康状態に関して、疾患特異的な質問票(AFEQT)を用いた主観的評価を行い、医師の認識とギャップがあるかどうか、またそのギャップが治療選択に与える影響を検討しました。計330名の新規に通院を開始した心房細動患者を対象に調査を行ったところ、患者の報告と医師の認識にはかなりの不一致がありました(図:双方の見解が一致していたのは34%のみ、残りの方には医師の過大か過小評価が存在)。さらに、認識の不一致があった患者は、カテーテル治療等が適切な介入が行われる確率が低くなることが分かりました。なかなか我々医療従事者にとって厳しい結果となりましたが、今後AFEQTのような患者報告アウトカムをツールとして診療に取り入れ、患者の声をより明確に医師に届けるシステムを整備することで、患者のニーズ沿った治療を提供できるのではないかと我々は考えています。既にそのための作業を開始しており、その成果を報告できるよう努力を続けて参ります。
(循環器内科 香坂俊 76回、池村修寛 89相当)
その他の掲載論文
1: DMHPpp1r17 neurons regulate aging and lifespan in mice through hypothalamic-adipose inter-tissue communication.
Cell Metabolism.
Kyohei Tokizane, Cynthia S. Brace, Shin-ichiro Imai