慶應義塾

1: Clinical Utility of the H2FPEF Score in Patients with Early Atrial Fibrillation

今月のサイエンス - 2024年04月

J Am Coll Cardiol HF.

Feb 14, 2024. Epublished DOI: 10.1016/j.jchf.2023.12.011

Reina Hirano, Nobuhiro Ikemura, Dan Nguyen, Philip G Jones, Takehiro Kimur, Yoshinori Katsumata, Ikuko Ueda, Seiji Takatsuki, John A. Spertus, and Shun Kohsaka

左から、香坂(責任著者)、平野(筆頭著者)、池村(共著者)

心房細動は成人で最も遭遇頻度の高い不整脈ですが、心不全の続発が大きな問題となっています。中でも【駆出率が保たれている(=心エコー検査が正常に見える)】タイプの心不全(HFpEF)は診断が難しく、見逃されたり、治療が遅れることがしばしば見受けられます。そのHFpEFの診断補助の為には、従来から「H2FPEFスコア」が推奨されて来ました(本邦の診療ガイドラインでも採用)。このH2FPEFスコアは症状や検査の組み合わせて計算するものですが、主に呼吸困難症例のみを対象としており、残念ながらこれまで心房細動患者での有効性検討はなされていませんでした。そこで私達は、慶應義塾大学病院ならびに10の関連施設からの助力を得て、約1800人の新規に心房細動と診断された患者のデータを収集、2年間追跡し、H2FPEFスコアと予後との関連を解析しました(各施設の先生方には本当にお世話になりました)。結果として、高いH2FPEFスコアは心不全入院のリスクと関連しており、加えてこうした方に対しては、従来のの心房細動治療だけでは、症状・QOLの改善が低いことが示されました。HFpEFの治療については、近年有効な特異的治療(SGLT2阻害薬等)が導入されるに至っています。今回の我々の研究成果は、心不全ハイリスク患者を早期に同定し、こうした治療を適切なタイミングで実施することに寄与できるものと考えてます。

最後に、この研究の発表にあたっては、筆頭著者が学生の時分から多くの先生方にご指導いただきました。この場をお借りして深謝申し上げます。

(循環器内科 香坂俊 76回、平野玲奈 102回、池村修寛)

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2: The International Association for the Study of Lung Cancer Thymic Epithelial Tumors Staging Project: Proposals for the N and the M Components for the Forthcoming (Ninth) Edition of the TNM Classification of Malignant Tumors.

Journal of Thoracic Oncology.

2024;19(1):52-70.

Fang WT, Girard N, Cilento V, Goren E, Dibaba D, Ruffini E, Ahmad U, Appel S, Bille A, Boubia S, Brambilla C, Cangir AK, Detterbeck F, Falkson C, Filosso PL, Giaccone G, Guerrera F, Huang JM, Infante M, Kim DK, Lucchi M, Marino M, Marom EM, Nicholson AG, Okumura M, Rami-Porta R, Rimner A, Simone CB, II, Asamura H.

責任著者の淺村

本論文は、2024に発効すする胸腺上皮性腫瘍のTNM病期分類第9版の改訂案を世界肺癌学会IASLCがJTO誌において公表したものである。TNM病期分類とは、UICCとAJCCが腫瘍の解剖学的進展範囲を、主腫瘍T、リンパ節転移N、遠隔転移Mの3者によって病期stageとして定義するもので、ほぼ全臓器の悪性腫瘍について規定されている。現代の癌治療においては、治療計画立案の初期段階において行われるのが病期分類の確定であり、これに則って治療は行われる。病期分類の改訂は7年毎で、2024年は第9版が発効する年度であり、本論文はその改訂内容をIASLCが公表したものである。ちなみに、肺癌、胸腺腫瘍、悪性胸膜中皮腫の胸部悪性腫瘍の3者については、実際の改訂作業は、IASLCのStaging and Prognostic Factors Committeeが実務を担当しており、私は委員長としてこの作業を統括したが、本論文は、委員会が計画する計28本の論文の内のひとつである。胸腺腫瘍については、今回の改訂では、 N分類とM分類が再定義され、特に胸腺癌の病期毎の生存曲線がよく分離されるようになった(図)。IASLCにおおける第10版に向けた改訂作業は既に始動しており、非解剖学的因子の導入が検討されている。

(東京歯科大学市川総合病院呼吸器外科 淺村尚生)

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