今月のサイエンス - 2024年03月
Nat Neurosci.
Tomohito Minakuchi, Eartha Mae Guthman, Preeta Acharya, Justin Hinson, Weston Fleming,
Ilana B. Witten, Stefan N. Oline & Annegret L. Falkner
ヒトを含め大抵の動物において、生存と繁殖の成功には同種他個体との相互作用、すなわち社会的行動が重要な鍵を握っています。社会的行動の具体例としては性行動や養育行動などがありますが、私はなかでも攻撃行動に焦点を当てて研究してきました。マウスではしばしば雄が他の雄にかみついたり引っ掻いたりするという形の本能的な攻撃行動が見られますが、攻撃行動が生じるか否かは、今いるのが自分の縄張りかそうでないかといった社会的文脈などに左右されます。そこで本研究では、マウスの攻撃行動へのモチベーションを制御する神経回路を特定することを目指しました。まず、攻撃行動へのモチベーションを定量的に評価するため、攻撃行動の機会が報酬となるようなオペラント課題を作製しました。そのうえでマウスが課題を遂行している間に、攻撃行動の中枢とされている背内側視床下部背外側部に投射している抑制性ニューロンの活動について、カルシウム計測あるいは光刺激を行いました。その結果、特に視床下部内側視索前野からの入力が攻撃行動へのモチベーションを抑制的に制御することを見出しました。一方、攻撃行動それ自体の強度は、別個の領域が独立して制御することも見出しました。
(プリンストン大学神経科学研究所(博士課程) 水口智仁 96回)
2: Cost-Effectiveness of Universal Asymptomatic Preoperative SARS-CoV-2 Polymerase Chain Reaction Screening: A Cost-Utility Analysis
Clin Infect Dis.
Shunsuke Uno, Rei Goto, Kimiko Honda, Sho Uchida, Yoshifumi Uwamino, Ho Nam koong, Ayumi Yoshifuji, Kei Mikita, Yaoko Takano, Morio Matsumoto, Yuko Kitagawa, Naoki Hasegawa
C O V I D - 1 9 のパンデミックの初期に、COVID-19の潜伏期間に手術を行うことにより術後呼吸器合併症を発症し重症化するリスクが報告され、周術期の術前PCRスクリーニングが推奨された。今回、我々は術前PCRスクリーニングの費用対効果に関する研究を実施した。費用効果分析では、1単位効果量あたりの増分費用を計算する。術前PCRスクリーニングでは、1QALYあたりの増分費用は291,123,368円、1死亡回避あたりの増分費用は74,469,236円であり、我が国でよく使われる費用対効果が優れるという目安(500万円/QALY)を大きく超え、費用対効果が悪い結果であった。感度分析においては、検査陽性率が0.739%を超える場合には費用対効果が優れていたが、術後呼吸器合併症発症率が22%を下回る場合には、検査陽性率に関わらず費用対効果は悪かった。本研究結果が発表された後、米国感染症学会のガイドラインは、術前の無症候PCRスクリーニングを推奨しないよう変更された。我が国において医療の効率化は喫緊の課題であり、引き続きこのような、社会に貢献できる費用対効果に関する研究を継続したいと考えている。 (感染症学 専任講師 宇野俊介 87回)