慶應義塾

1: Gene therapy ameliorates spontaneous seizures associated with cortical neuron loss in a Cln2R207X mouse model

今月のサイエンス - 2023年08月

J Clin Invest.

2023 Jun 15;133(12):e165908. doi: 10.1172/JCI165908.

Keigo Takahashi, Elizabeth M. Eultgen, Sophie H. Wang, Nicholas R. Rensing, Hemanth R. Nelvagal, Joshua T. Dearborn, Olivier Danos, Nicholas Buss, Mark S. Sands, Michael Wong, and Jonathan D. Cooper

高橋(筆頭著者)

神経セロイドリポフスチン症(NCL)は複数のライソゾーム蛋白の欠損によって引き起こされる遺伝性神経変性疾患である。NCL2型(CLN2)は蛋白質分解酵素であるTPP1の欠乏を原因とし、患者は2〜4歳にてんかんを発症後退行、失調、視力障害が進行し10代までに死亡する。本疾患の病態生理は不明な点が多く、現時点では2週毎投与が必要な脳室内酵素補充療法のみ適応があり、より効果的かつ持続的な治療法の開発が望まれている。筆者らは患者に多い病的変異を有するCln2ノックインマウスの行動及び神経病理学的解析を行い、マウスが致死性のてんかん発作を発症する事、それに先行して脳皮質におけるGABA作動性神経細胞が減少し始める事などを明らかにした。さらに筆者らはアデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を用いた遺伝子治療がこれらのてんかん性発作及び神経病理学的異常を改善し、生存期間も有意に延長する事を示した。現在当遺伝子治療の臨床試験に向けて準備が進められている。

(セントルイスワシントン大学 高橋啓悟 94回)

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2: Irreversible covalent Bruton's tyrosine kinase inhibitor, TAS5315 versus placebo in rheumatoid arthritis patients with inadequate response to methotrexate: a randomised, double-blind, phase IIa trial.

Annals of the Rheumatic Diseases.

2023; 82(8). doi: 10.1136/ard-2022-223759

Takeuchi T, Tanaka S, Murata M, Tanaka Y.

竹内(筆頭著者)、村田(共著者)

関節リウマチ(RA)の治療は、生物学的製剤やJAK阻害薬などの分子標的治療薬の導入によって比較的に進歩を遂げたものの、依然として臨床現場におけるアンメットニーズが高い。新たな標的分子の一つにブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)がある。B細胞、マクロファージ、肥満細胞、血小板、破骨細胞などに発現され、その細胞内シグナル伝達に関与する。TAS5315は、我が国で開発されたBTK阻害薬で、標的タンパク質の特定なアミノ酸残基と共有結合しその機能を不可逆的に阻害するコバレントドラッグであり、破骨細胞に高い特異性を示す。この薬剤の関節リウマチに対する有用性を世界で初めて検証した早期第2相試験の成績が発表された(図)。Part Aでは、プラセボ群、実薬2用量の3群ランダム化比較試験(n=91)、引き続くPart Bでは、プラセボ群が実薬に切り替えられ24週間(治験開始から36週)試験が継続された(n=84)。臨床検査医学村田満教授にも参画いただいて、出血リスクが慎重に評価された。主要評価項目であるACR20反応率は、実薬群78.9%と高値であったが、プラセボ群も60%と高く、残念ながらP=0.053となった。しかし、その他の臨床的効果、自己抗体産生抑制効果、関節破壊抑制効果など、有望な数値を示した。安全性に関しては、皮下出血、点状出血、紫斑などの出血症状が9例に認められたが、一例の小脳出血による重篤有害事象を除いては、薬剤継続・中断によって症状は回復した。今後、さらなる臨床試験によってその有用性が検証されることが期待される。

(埼玉医科大学学長 竹内勤 59回、

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授 村田満 60回)

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その他の掲載論文

1: Early stage gastric adenocarcinoma: clinical and molecular landscapes.

Nature Reviews Clinical Oncology.

2023;20(7):453-469. doi: 10.1038/s41571-023-00767-w

Hirata Y, Noorani A, Song SM, Wang LH, Ajani JA.