今月のサイエンス - 2016年04月
Nature Communications
18 MARCH 2016
Yasuaki Kabe, Takanori Nakane, Ikko Koike, Tatsuya Yamamoto, Yuki Sugiura, Erisa Harada, Kenji Sugase, Tatsuro Shimamura, Mitsuyo Ohmura, Kazumi Muraoka, Ayumi Yamamoto, Takeshi Uchida, So Iwata, Yuki Yamaguchi, Elena Krayukhina, Masanori Noda, Hiroshi Handa, Koichiro Ishimori, Susumu Uchiyama, Takuya Kobayashi and Makoto Suematsu
医化学教室の加部泰明講師と末松誠教授(当時。現AMED理事長、客員教授)らの研究グループは、悪性腫瘍で高発現している膜結合性ヘムタンパク質であるPGRMC1のX線結晶構造解析に世界で初めて成功し、この分子を介してがん細胞が増殖を活性化し、抗がん剤耐性を獲得する機構を世界で初めて明らかにしました。PGRMC1は、タンパク質中のチロシン残基を介してヘムと配位結合することが分かりました。このヘムはタンパク質表面上に突出した構造を取っており、2分子のPGRMC1が互いのヘム同士の疎水的に重なり合って結合により特異な2量体を形成します。このようなヘムの重合を介した多量体化は真核生物では初めての例です。生体内ガス分子であるCOは、ストレス下で誘導される酵素であるヘムオキシゲナーゼにより増加しますが、COがPGRMC1上のヘムに結合するとヘム同士の重合が解離してPGRMC1の機能が消失することを見いだしました。2量体化したPGRMC1はがん増殖に関わる上皮成長因子の受容体(EGFR)と会合しがん増殖シグナルを増強すること、さらにPGRMC1の2量体は薬物代謝酵素であるシトクロムP450とも会合し、抗がん剤の分解活性を増強することにより、がん細胞の化学療法耐性を促進することが解明されました。
(日本医療研究開発機構理事長 末松誠 医化62回)
2: Mutually repressive interaction between Brn1/2 and Rorb contributes to establishment of neocortical layer 2/3 and layer 4.
Proc. Natl. Acad. Sci.
Koji Oishi, Michihiko Aramaki, and Kazunori Nakajima
神経系における情報処理の司令塔である大脳皮質では、情報の入力、処理、出力が行われます。これらは、大脳皮質に存在するさまざまなタイプの神経細胞にその役割が担われています。しかし、異なるタイプの神経細胞がどのように分化するのか、そのメカニズムの詳細はわかっていませんでした。今回の研究では、大脳皮質外から情報を受け取る役割の神経細胞(大脳皮質第4層)と、情報処理を行う役割の神経細胞(第2-3層)について調べました。Rorb、Brn2という転写因子は、成熟したこれらの神経細胞にそれぞれ特異的に発現しており、これらに着目して解析を行いました。その結果、第2-3層と第4層は未成熟な段階では似通った特徴(共通した転写因子の発現パターン)をもつことが明らかになりました。さらに、分化過程では、それぞれの分化を促すプログラム(それぞれRorb、Brn2に依存する)が、もう一方の分化のプログラムを阻害することで、どちらか一方のみのタイプが効果的に選択され、分化していくことを見出しました。現在、さまざまな疾患に対して、iPS 細胞などから作り出した、治療に必要な特定の細胞を移植して治療する細胞治療に期待が寄せられています。今回の研究結果は、その進展に貢献する可能性が期待されます。
(解剖学教室 大石康二、仲嶋一範 67回)
その他の掲載論文
1: Circulating Cell Death Biomarkers May Predict Survival in Human Lung Transplantation.
Am J Respir Crit Care Med.
2016 Jan 21.
Hashimoto K, Besla R, Zamel R, Juvet S, Kim H, Azad S, Waddell TK, Cypel M, Liu M, Keshavjee S.
2: Aspp1 preserves hematopoietic stem cell pool integrity and prevents malignant transformation.
Cell Stem Cell.
17(1):23-34, 2015
Yamashita M, Nitta E, Suda T.