今月のサイエンス - 2021年06月
Epub 2021 Apr 22.
Mihoko Yoshino, Jun Yoshino, Brandon D. Kayser, Gary Patti, Michael P. Franczyk,Kathryn F. Mills, Miriam Sindelar, Terri Pietka, Bruce W. Patterson, Shin-Ichiro Imai, Samuel Klein
私が所属しておりますワシントン大学医学部内科Center for Human Nutritionでは塾医学部客員教授を兼任されるSamuel Klein教授を中心として、先駆的な臨床代謝研究が展開されております。本研究ではNAD(nicotinamide adenine dinucleotide)代謝産物として注目を集めるnicotinamide mononucleotide(NMN)の代謝的効用を、プラセボを対照とした二重盲検比較研究で検討しました。本研究の共同研究者でもある吉野純准教授(現塾医学部腎臓内分泌代謝内科)、今井眞一郎教授(ワシントン大学医学部発生生物学部門)らのグループを中心に、齧歯類において、NMNの投与が主要代謝臓器のNAD合成を賦活化し、肥満や加齢に合併するインスリン抵抗性や他の代謝異常症を改善することが報告されてきました。そこで、本臨床研究では、肥満を伴う糖尿病予備群の閉経後女性を対象に、10週間のNMN(250mg/日)およびプラセボ経口投与の影響を検討しました。結果、非放射性同位体を用いた正常血糖インスリンクランプ法により、NMNはプラセボに比べ骨格筋への糖取り込み能を有意に増加させ(図)、NMNがヒトにおいてもインスリン抵抗性を改善することが明らかとなりました。またこれらの結果に合致して、NMNは、骨格筋内のインスリンシグナルを制御するAKTやmTORのリン酸化を亢進させ、リモデリングに関連する遺伝子群の発現を上昇させました。今後、詳細な作用メカニズム、他のコホートにおける効用の検討が期待されます。最後になりますが、在学中より現在に至るまで、ご指導を頂いております伊藤裕教授(腎臓内分泌代謝内科)にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
(ワシントン大学医学部内科Center for Human Nutrition 吉野美保子 79相当)