慶應義塾

1: Blood and lymphatic systems are segregated by the FLCN tumor suppressor

今月のサイエンス - 2021年02月

Nature Communications.2020 December 9. doi: 10.1038/s41467-020-20156-6

Ikue Tai-Nagara, Yukiko Hasumi, Dai Kusumoto, Hisashi Hasumi, Keisuke Okabe, Tomofumi Ando, Fumio Matsuzaki, Fumiko Itoh, Hideyuki Saya, Chang Liu, Wenling Li, Yoh-suke Mukouyama, W. Marston Linehan, Xinyi Liu, Masanori Hirashima, Yutaka Suzuki, Shintaro Funasaki, Yorifumi Satou, Mitsuko Furuya, Masaya Baba & Yoshiaki Kubota

久保田研究室のメンバーたち

血管とリンパ管は、別々のネットワークを全身に張り巡らせ、それぞれ独自の機能を発揮します。両者は、最終合流地点である頸部の静脈角まで一切接続すること無く、独立したネットワークを形成します。しかしながら、血管、特に静脈とリンパ管の構造は酷似しており、両者がお互いをどのように見分け、独立性を担保しているのかは、古くからの疑問として残されてきました。本研究では、多発性肺嚢胞、腎がんなどを典型的症状とするBirt-Hogg-Dubé症候群の原因遺伝子として知られるFlcnに関し、血管内皮特異的欠損マウスを作成したところ、血管とリンパ管がところどころで吻合してしまうことを見出しました。メカニズムとしては、静脈内皮においてFlcnがリンパ管発生のマスター転写因子であるProx1の発現量を負に制御しており、この制御が破綻すると、『リンパ管もどき静脈内皮細胞』が生じ、静脈がリンパ管を接続すべき対象であると認識してしまうことを見出しました。

(解剖学教室 久保田義顕 79回)

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2: Inhibition of aquaporin-3 in macrophages by a monoclonal antibody as potential therapy for liver injury

Nature Communications.2020 Nov 9;11(1):5666. doi: 10.1038/s41467-020-19491-5.

Mariko Hara-Chikuma, Manami Tanaka, Alan S. Verkman & Masato Yasui

左から、安井、筆頭責任著者の竹馬、研究員の田中(いずれも薬理学教室)

慢性肝炎は、症状が進行すると肝硬変や肝がんを発症することがあります。これらに対する有効な根治療法を開発するために、現在、肝硬変への病態進行のメカニズム解明や、新たな薬剤の探索が待たれています。本研究では、肝臓に局在する免疫細胞マクロファージに発現するアクアポリン3(AQP3)が、肝炎・肝硬変の発症過程で重要な役割をもつことを明らかにしました。肝炎モデルマウスでは、AQP3欠損マウスは、野生型マウスに比べて、急性および慢性の肝炎症状が軽減しました。AQP3が欠損したマクロファージでは、肝障害の発症過程でおこる細胞の活性化が抑制され、これにより肝臓での慢性炎症や線維化が減少することを示しました。さらに、AQP3を阻害するモノクローナル抗体を世界で初めて樹立し、AQP3抗体投与がマウスの肝炎発症を抑制することを確認しました。今後はさらに、肝炎や肝硬変の病態進行過程でのAQP3の役割を検討するほか、AQP3抗体やAQP3阻害薬の開発を進めることで、新たな肝炎・肝硬変の治療法開発の一助となることが期待されます。

(薬理学教室 安井正人 68回)

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3:Anti-senescent drug screening by deep learning-based morphology senescence scoring

Nature Communications.

2021 Jan 11;12(1):257. doi: 10.1038/s41467-020-20213-0

Dai Kusumoto, Tomohisa Seki, Hiromune Sawada, Akira Kunitomi, Toshiomi Katsuki, Mai Kimura, Shogo Ito, Jin Komuro, Hisayuki Hashimoto, Keiichi Fukuda & Shinsuke Yuasa

筆頭著者の楠本(左)、責任著者の湯浅(右)

近年、人工知能の発展により、医学分野においても様々な問題が解決されることが期待されています。本論文では、人工知能技術の中でも画像解析に特化した畳み込みニューラルネットワークを用いて、培養血管内皮細胞の顕微鏡写真のみから細胞の老化度合いを評価するシステム(Deep-SeSMo)の開発を行いました。さらに同システムを応用して化合物のスクリーニングを行い、血管内皮細胞の老化を抑制する薬剤候補を同定しました。従来、化合物スクリーニングを行うためには、細胞が病的状態にあることを評価するために分子生物学的手法を用いる必要がありましたが、今回開発したDeep-SeSMoは顕微鏡画像を撮影するのみで画像1枚につきわずか0.1ミリ秒で評価可能であり、従来よりも高速かつ簡便に、信頼性の高い創薬スクリーニングが可能となりました。本研究を応用することで、血管老化を抑制する新規治療薬開発につながることが期待されます。

(内科学(循環器) /予防医療センター 楠本 大 86回)

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その他の掲載論文

1: Primary cilia safeguard cortical neurons in neonatal mouse forebrain from environmental stress-induced dendritic degeneration

PNAS.nuary 5, 2021 118 (1) e2012482118; DOI: 10.1073

Seiji Ishii, Toru Sasaki, Shahid Mohammad, Hye Hwang, Edwin Tomy, Fahad Somaa, Nobuyuki Ishibashi, Hideyuki Okano, Pasko Rakic, Kazue Hashimoto-Torii, and Masaaki Torii

2: Advances in the diagnosis and treatment of dry eye.

Progress in Retinal and Eye Research.2020;78.

Kojima T, Dogru M, Kawashima M, Nakamura S, Tsubota K.