今月のサイエンス - 2016年02月
JAMA Intern Med
2015 Dec 1;175(12):1980-2. doi: 10.1001/jamainternmed.2015.5119.
Inohara T, Miyata H, Ueda I, Maekawa Y, Fukuda K, Kohsaka S.
大動脈バルーンパンプ(IABP)は、大腿動脈から大動脈に挿入する筒状の風船で、その風船を心臓の拍動に合わせて膨張させることで循環の補助を行う。このことは理に叶ってはいるものの、実はランダム化試験等でIABPは結果を残せていない。カテーテル治療(PCI)の安全性が進歩してきた結果として、昔ほど必要でなくなっているという可能性もある。そこで我々は本学の多施設前向きレジストリ(KiCS[キックス])を用いてIABP使用の現状把握とその有効性検討を行った。KiCSは2009年から大学病院と関連15施設において展開されており、2016年現在17000例以上が登録されている。我々が解析を行ったデータでは、PCI全体の7%にIABPが使用されていた。全体比較では、IABP例に死亡例が多く、その傾向は統計学的補正を行っても変わらなかった。サブ解析でも同様の傾向がみられたが、注目すべきこととして、適応が一般的でない症例群(例. 非ショック例)の方がよりリスクが高くなっていた。つまり、IABP が必要のなさそうな軽症例の方でより大きなリスクの増加が懸念された。本研究は、これまで標準とされていた治療法が、その領域全体の進歩に伴って役割を変える、ということを示すことができたという点で意義深い。
(循環器内科教授 福田恵一 62回)
2: Th17 Cell Induction by Adhesion of Microbes to Intestinal Epithelial Cells
CELL
163 (2):367-380; 10.1016/j.cell.2015.08.058 OCT 8 2015
Atarashi K, Tanoue T, Ando M, Kamada N, Nagano Y, Narushima S, Suda W, Imaoka A, Setoyama H, Nagamori T, Ishikawa E, Shima T, Hara T, Kado S, Jinnohara T, Ohno H, Kondo T, Toyooka K, Watanabe E, Yokoyama S, Tokoro S, Mori H, Noguchi Y, Morita H, Ivanov II, Sugiyama T, Nunez G, Camp JG, Hattori M, Umesaki Y, Honda K
我々の腸内には数百種類、百兆個の常在細菌が生息し、宿主の免疫系や生理機能、代謝などへ多大な影響を及ぼしています。そのため、腸内細菌が私たちの健康と密接に結びついており、腸内細菌叢の異常(dysbiosis)が様々な疾患の発症に関与していることが明らかになってきています。本論文は、腸内細菌がどのようなメカニズムでTh17細胞を誘導・活性化を促進しているかを明らかにしたもので、ヤクルト中央研究所の梅崎良則博士らと共同で行った研究成果です。腸管上皮細胞への細菌の強固な接着がトリガーとなり、上皮細胞や樹状細胞、自然リンパ球がお互いに協調して最終的に強いTh17細胞の誘導が促進されることが明らかになりました。また、ヒト腸内細菌からTh17細胞を誘導する20菌株の細菌を単離することに成功しました。Th17細胞は真菌や細胞外寄生細菌の排除に重要な働きをするヘルパーT細胞ですが、過剰な活性化は炎症性腸疾患や自己免疫疾患の発症につながることが示唆されています。今後、効果的なTh17細胞誘導を導くプロバイオティクスへの応用や、腸内細菌の人為的操作による炎症性腸疾患や自己免疫疾患の治療や予防法の開発につながることが期待されます。
(微生物学・免疫学教授 本田賢也 00相当)
その他の掲載論文
1: Safety and Efficacy of AJM300, an Oral Antagonist of α4 Integrin, in Induction Therapy for Patients With Active Ulcerative Colitis.
Gastroenterology
December 2015, Volume 149, Issue 7, Pages 1775–1783.e2
Naoki Yoshimura*, Mamoru Watanabe, Satoshi Motoya, Keiichi Tominaga, Katsuyoshi Matsuoka,Ryuichi Iwakiri, Kenji Watanabe, Toshifumi Hibi
2: Interferon and IL-27 antagonize the function of group 2 innate lymphoid cells and type 2 innate immune responses.
NATURE IMMUNOLOGY
17 (1):76-+; 10.1038/ni.3309 JAN 2016
Moro K, Kabata H, Tanabe M, Koga S, Takeno N, Mochizuki M, Fukunaga K, Asano K, Betsuyaku T, Koyasu S