今月のサイエンス - 2021年12月
H Takahashi, H Nomura, H Iriki, A Kubo, K Isami, Y Mikami, M Mukai, T Sasaki, J Yamagami, J Kudoh, H Ito, A Kamata, Y Kurebayashi, H Yoshida, A Yoshimura, H W Sun, M Suematsu, J J O'Shea, Y Kanno, M Amagai
細胞内コレステロール濃度は、コレステロールと酸化代謝物のオキシステロールの増減に応じて調節されている。本研究ではIL-27の作用によりCD4+ T細胞がコレステロール25-水酸化酵素(Ch25h)を発現することを見出した。Ch25hはコレステロールを酸化し25-水酸化コレステロール(25OHC)に代謝する酵素であり、Ch25h+ T細胞は25OHCを細胞外に分泌した。25OHCがT細胞に作用すると、コレステロールが過剰と判断され、コレステロール合成酵素群の発現が低下した。その結果コレステロールが不足し細胞が死滅した。T細胞依存性の自己免疫性皮膚炎モデルでは、CD4+ T細胞のCh25hが欠失すると、浸潤T細胞の数が増加し、皮膚炎が増悪した。以上より、Ch25h+CD4+ T細胞はコレステロール調節機構を利用しT細胞のコレステロールを枯渇させ細胞死を誘導することで、免疫を制御すると考えられた。
(皮膚科 高橋勇人 79回)
2: Production of functional oocytes requires maternally expressed PIWI genes and piRNAs in golden hamsters.
Nature Cell Biology.
2021 Sep;23(9):1002-1012. doi: 10.1038/s41556-021-00745-3.
Hasuwa H, Iwasaki YW, Yeung WKA, Ishino K, Masuda H, Sasaki H, Siomi H.
マウスは生命科学研究にとって不可欠な実験動物である。しかし、ヒトには存在するがマウスは持たない遺伝子やヒト疾患原因遺伝子変異をマウスの相同遺伝子に導入しても表現型を示さないこともある。このギャップを埋めるため、私達は高品質なゴールデンハムスターゲノム配列を構築し、ゲノム編集ゴールデンハムスター作製法を確立した。モデル系として、マウス以外の哺乳類が有する遺伝子(PIWIL3)とマウスでは精巣でのみ発現するが他の哺乳類では卵巣精巣共に発現する遺伝子(PIWIL1)を改変したハムスターを作製した。PIWIL3変異体の雌は妊孕性低下、卵子DNAの低メチル化及び子卵老化の加速を、また、PIWIL1 変異体は雌雄の不稔と転移因子(トランスポゾン)の脱抑制を示した。この成果は、ゴールデンハムスターがマウスでは実現できなかった遺伝子機能解析を可能にし、よりヒトに近いモデル動物として利用できることを示す。
(分子生物学教室 塩見春彦 61相当)
その他の掲載論文
1: Promise of nucleic acid therapeutics for amyotrophic lateral sclerosis.
Annals of Neurology.
Daisuke Ito