今月のサイエンス - 2020年07月
Science Advances
2020 May 13;6(20):eaaz5195. Doi:10.1126/sciadv.aaz5195.
Yamaguchi Takefumi, Higa Kazunari, Yagi-Yaguchi Yukari, Ueda Koji, Noma Hisashi, Shibata Shinsuke, Nagai Toshihiro, Tomida Daisuke, Yasu-Mimura Ririko, Osama Ibrahim, Matoba Ryo, Tsubota Kazuo, Hamrah Pedram, Yamada Jun, Kanekura Kohsuke, Shimazaki Jun
角膜には免疫寛容があり、角膜移植は臓器/組織移植の中でも最も成功率の高い組織とされています。しかし、拒絶反応がなくても、何度移植をしてもすぐに移植片がだめになる予後が悪い患者群がいます。涙が枯れていたり虹彩がぼろぼろになった患者たちです。患者自身の細胞すら生存できず失明した疾患環境で、他人の細胞(や将来iPS)が長期に生存できるでしょうか。本研究は、前房水と角膜の臨床検体の多層オミクス解析から、なぜ予後が悪いか不明だった病態に炎症・細胞老化・糖代謝など特定の病態があること、虹彩萎縮を自然発症するマウスでヒトと同様の現象があることを証明しました。本研究は東京歯科大・市川総合病院眼科の20年累計7000件を超える角膜移植から得た経験知を基礎に、新たに多層オミクス解析をした成果です。今後、「多細胞が維持する前房環境の恒常性破綻と細胞応答」の病態を解明し、未来の治療へとつなげていきたいと考えています。
(東京歯科大学市川総合病院眼科 島﨑潤 61回、山口剛史 81回)