慶應義塾

1: Landscape and function of multiple mutations within individual oncogenes.

今月のサイエンス - 2020年06月

Nature,

8 April 2020, DOI:10.1038/s41586-020-2175-2

Yuki Saito, Junji Koya, Mitsugu Araki, Yasunori Kogure, Sumito Shingaki, Mariko Tabata, Marni B. McClure, Kota Yoshifuji, Shigeyuki Matsumoto, Yuta Isaka, Hiroko Tanaka, Takanori Kanai, Satoru Miyano, Yuichi Shiraishi, Yasushi Okuno & Keisuke Kataoka

左から斎藤優樹(筆頭著者)、国立がん研究センター片岡圭亮分野長(責任著者)

年大規模がんゲノム解析研究により、様々ながん遺伝子異常が同定されてきましたが、その全貌や機能的意義は未だ十分に分かっていません。そこで私達は、これまでで最大規模の症例数である約6万例の大規模ながんゲノムデータについて、スーパーコンピューターを用いた横断的全がん解析を行い、同一がん遺伝子内の複数変異が相乗的に機能するという新たな発がんメカニズムを解明しました。がん遺伝子は従来特定の部位(ホットスポット)に単独で変異が生じることが多いと考えられてきましたが、実際にはPIK3CA遺伝子など様々ながん遺伝子において複数変異を有する症例が多数認められました。マルチオミクス解析および細胞株・マウスを用いた機能解析を行うと、同一がん遺伝子内の複数変異は相乗効果を示し、単独では機能的に弱い変異であっても、協調的に強い発がん促進作用を示す事が分かりました。本研究成果はがん遺伝学の基盤的知見となりうる発見であり、がんゲノム医療への応用が期待されます。

(内科学(消化器) 斎藤 優樹 94回)

本研究成果の概略図

2: Somatic inflammatory gene mutations in human ulcerative colitis epithelium.

Nature.

2020;577(7789):254-+.

Nanki K, Fujii M, Shimokawa M, Matano M, Nishikori S, Date S, Takano A, Toshimitsu K, Ohta Y, Takahashi S, Sugimoto S, Ishimaru K, Kawasaki K, Nagai Y, Ishii R, Yoshida K, Sasaki N, Hibi T, Ishihara S, Kanai T, Sato T.

左から南木康作(筆頭著者)、藤井正幸

―survival of the fittest― 環境に適応した個体が選択される、適者生存は生物進化を駆動する原理である。今回、我々はヒト体内でも適応進化が存在することを初めて実証した。大腸上皮は絶えず遺伝子変異を蓄積し、運悪くがん遺伝子に変異が入ると、環境とは無関係に増殖を繰り返す“がん”となる。本研究では、発がん変異とは異なる、“適者生存変異”の存在を見出した。潰瘍性大腸炎粘膜は上皮に細胞死を誘導する炎症性サイトカイン、IL-17が豊富にある。このため、IL-17シグナルを活性化できない変異上皮細胞は、IL-17の攻撃を免れ、選択的なクローン拡大を示す。こうした変異クローンは、環境に馴染みながら拡がり、がんのような形態変化を呈さずに身体の免疫反応を変えていく。これまで、体性変異=がん変異 として目の敵にされてきた。新しい変異様式、“適者生存変異”は我々の味方なのか、敵なのか? 今後の研究が面白い。

(オルガノイド医学 佐藤俊朗 76回、藤井正幸 85相当、消化器内科 南木康作 86回)

L-17Aによる慢性炎症下では、IL-17シグナルに遺伝子変異を持つ上皮は細胞傷害を回避し、長期経過によってクローナルな変異領域の拡大を認める。

その他の掲載論文

1: CYP2D6 Genotype-Guided Tamoxifen Dosing in Hormone Receptor-Positive Metastatic Breast Cancer (TARGET-1): A Randomized, Open-Label, Phase II Study

Journal of Clinical Oncology.

2020;38(6):558-+.

Tamura K, Imamura CK, Takano T, Saji S, Yamanaka T, Yonemori K, Takahashi M, Tsurutani J, Nishimura R, Sato K, Kitani A, Ueno NT, Mushiroda T, Kubo M, Fujiwara Y, Tanigawara Y.

2: Chromosome Engineering of Human Colon-Derived Organoids to Develop a Model of Traditional Serrated Adenoma.

Gastroenterology.

22020;158(3):638-+.

Kawasaki K, Fujii M, Sugimoto S, Ishikawa K, Matano M, Ohta Y, Toshimitsu K, Takahashi S, Hosoe N, Sekine S, Kanai T, Sato T.

3: Dual Programmed Death Receptor-1 and Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-2 Blockade Promotes Vascular Normalization and Enhances Antitumor Immune Responses in Hepatocellular Carcinoma.

Hepatology.

2020;71(4):1247-1261.

Shigeta K, Datta M, Hato T, Kitahara S, Chen IX, Matsui A, Kikuchi H, Mamessier E, Aoki S, Ramjiawan RR, Ochiai H, Bardeesy N, Huang PG, Cobbold M, Zhu ARX, Jain RK, Duda DG.

4: Autoimmune bullous skin diseases, pemphigus and pemphigoid.

Journal of Allergy and Clinical Immunology.

2020;145(4):1031-1047.

Egami S, Yamagami J, Amagai M.