今月のサイエンス - 2020年05月
BMJ-British Medical Journal.
Ryoko Katagiri, Norie Sawada, Atsushi Goto, Taiki Yamaji, Motoki Iwasaki M, Mitsuhiko Noda, Hiroyasu Iso, Shoichiro Tsugane for the Japan Public Health Center-based Prospective Study Group
われわれの研究グループは、いろいろな生活習慣とがん・循環器疾患などの病気との関連を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命延伸に資するためのコホート研究(JPHC Study)を行っている。本論文では、1995-98年に実施した食習慣調査に回答した45~74歳の男女約9万人を2012年まで追跡し、大豆食品、発酵性大豆食品の摂取と死亡リスクとの関連を前向きに検証した。大豆には、たんぱく質、食物繊維、ミネラル、イソフラボンなど様々な成分が含まれており、特に納豆や味噌といった発酵性食品は、加工中に成分の消失が少ないため、健康状態に良好な影響を与えることが期待される。その結果、総大豆食品の摂取と死亡リスクとの明らかな関連は見られなかったが、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多いほど死亡リスクが低下しいていた。また、納豆の摂取量が多いほど循環器疾患死亡リスクの低下が示された。観察研究の限界はあるが、日本人の長寿の要因の一つとして、日本特有の食品が寄与している可能性が示唆された。
(国立がん研究センター社会と健康研究センター 津金昌一郎 60回)
2: An ultra-stable cytoplasmic antibody engineered for in vivo applications.
Nature Communications.
Kabayama H, Takeuchi M, Tokushige N, Muramatsu S, Kabayama M, Fukuda M, Yamada Y, Mikoshiba K.
御子柴 克彦 慶大客員教授(上海科技大学 教授、東邦大理 特任教授, 理研客員主幹研究員)と樺山 博之博士(STAND Therapeutics株式会社 代表取締役CEO)は理化学研究所での成果論文(Title: An ultra-stable cytoplasmic antibody engineered for in vivo applications)を自治医大村松慎一、東北大福田光則両教授と共同でNature Communications (2020, Jan 17)に発表しました。従来の抗体では不可能であった細胞内のタンパク質の機能阻害を可能にする、安定細胞内抗体 (Stable cytoplasmic antibody: STAND)の技術開発に世界で初めて成功しました。細胞内タンパク質の機能操作による、生命現象の理解や疾患治療薬の開発につながるものです。現在、認可・販売されている様々な抗体医薬品の標的はすべて細胞外分子です。抗体タンパクは、細胞内の小胞体の内腔で正しくフォールディングされ、細胞外へと分泌されますが、細胞質内で抗体を作らせると抗体が正しくフォールディングできず凝集してしまい標的に作用できません。研究チームは、強いネガティブチャージを持つペプチドタグの融合により、細胞質内で凝集する不安定な抗体も安定化させることに成功し、神経活動の抑制や、ヒトがんの約25%に関わるrasファミリーの一つKrasの機能抑制にin vivoで成功しました。今後、この細胞内抗体作製技術により、細胞内タンパク質の機能解析や細胞内抗体医薬の開発が進むことが期待されます。
(慶應義塾大学客員教授、上海科技大学教授、東邦大理特任教授 御子柴克彦 48回)
その他の掲載論文
1: IP3 Receptor Plasticity Underlying Diverse Functions.
Annual Review of Physiology, Vol 82. (Annual Review of Physiology; 82).
Hamada K, Mikoshiba K.