今月のサイエンス - 2019年09月
PNAS,
116 (29):14714-14723; 10.1073/pnas.1818907116 JUL 16 2019
Kohei Fujita, Svetoslav Chakarov, Tetsuro Kobayashi, Keiko Sakamoto, Benjamin Voisin, Kaibo Duan, Taneaki Nakagawa, Keisuke Horiuchi, Masayuki Amagai, Florent Ginhoux, and Keisuke Nagao
樹状細胞(DC)は、T細胞機能を制御することで獲得免疫の起点となる免疫細胞である。主としてconventional DC (cDC) 1と2 に分けられ、前者は主としてCD8 T細胞、後者はCD4 T細胞を活性化する。cDC1とcDC2は骨髄前駆細胞に由来し、サイトカインであるFLT3Lに依存するが、どのような機序でそれぞれの分化が維持されているのかは完全に理解されていない。膜型酵素ADAM10は様々な細胞の分化に必須であり、その遺伝子欠損は胎生期致死に至る。DCの分化におけるADAM10の役割は明らかになっておらず、本研究では、DC特異的欠損マウス(ADAM10ΔDC)を作成し、ADAM10が脾臓のcDC2の分化・維持に必須であることを明らかにした。FLT3Lの主たる供給源としてT細胞が知られているが、我々はcDC2がFLT3Lを発現し、ADAM10 を介して活性型FLT3Lを細胞膜上から遊離させることで、cell-autonomousにFLT3Lを供給していることを明らかにした。cDC2の分化異常は皮膚や肺、それぞれの所属リンパ節では観察されず、DCの分化が臓器・組織ごとに異なることが示唆された。これらの知見が炎症制御、ワクチン、腫瘍免疫の治療戦略の基盤として役立つことを期待する。
(歯科・口腔外科学教室 藤田 康平 88相当)
2: Long-term effectiveness of oral second-generation antipsychotics in patients with schizophrenia and related disorders: a systematic review and meta-analysis of direct head-to-head comparisons
統合失調症は幻覚、妄想等の陽性症状、感情鈍麻や意欲低下等の陰性症状を特徴とする精神疾患である。陽性症状が活発化する急性期は治療に反応しやすく、多くの場合いったん症状は安定化するが、怠薬等を理由に再発を繰り返すと陰性症状や認知機能障害が強くなり社会機能が低下する。よって維持期の治療が大切である。治療薬である抗精神病薬は今までに80以上開発されており、副作用の軽減を主眼に開発された第二世代抗精神病薬は約30ある。これらは新世代の薬剤として一括りに論じられることもあるが、その作用や副作用に違いがあることが示されており情報の整理が求められていた。
本論文は統合失調症の維持期治療における代表的な13の第二世代抗精神病薬同士の無作為化比較試験のメタ解析である。薬剤継続率や再発率など15のアウトカムについて検証し、解析には59試験、46, 000人弱のデータが組み込まれた。結果の詳細は省くが、効果および副作用のプロファイルは薬剤によって大きく異なっていた。改めて、個々の患者の状態に適した薬剤選択が必要であることが示されたといえる。チームでは、本研究のために10年以上に渡ってデータを抽出・蓄積し、解析を行ってきた。本論文は膨大な情報を多忙な臨床医にわかりやすく届けることを目的としており、世界中の精神科医に利用してもらえれば幸いである。
(精神・神経科学教室 岸本泰士郎 79回)