今月のサイエンス - 2019年08月
Cell,
2019 May 30; 177 (6) : 1448-1462.e14.
Koronowski K. B., Kinouchi K., Welz P. S., Smith J. G., Zinna V. M., Shi J., Samad M., Chen S., Magnan C. N., Kinchen J. M., Li W., Baldi P., Benitah S. A., Sassone-Corsi P.
概日リズムは光や食事などの環境因子に同調しながら、約24時間の周期で現れる持続的な振動であり、生体が昼夜の変化に予測して対応することで恒常性を維持する適応機構と考えられています。夜間の過剰な光暴露や夜食は概日リズムの乱れを招き、糖尿病や癌など様々な疾患のリスクとなることが指摘されています。概日リズムの発現には体内に存在する概日時計が重要であり、今回の研究では時計遺伝子Bmal1を欠損した、概日リズムを持たないマウスにおいて、肝臓特異的にBmal1の内因性発現を再構築し、肝臓の概日時計が自律的に振動することが明らかになりました。この自律的な概日時計の振動は、肝臓における糖やNAD+代謝を中心に、遺伝子で10%、代謝産物で20%程度の自律的な日内変動を再構築しました。一方、肝臓で再構築されなかった約80~90%の非自律的な日内変動は、他臓器の概日時計に由来する周期的なシグナルによってもたらされるものと考えられ、臓器連関における概日リズムの重要性が示唆されました。本研究結果は、概日リズム障害が危険因子となる、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に対する予防や治療の開発に寄与することが期待されます。
(腎臓内分泌代謝内科 木内 謙一郎 85回)
2: Mitochondrial ClpP-Mediated Proteolysis Induces Selective Cancer Cell Lethality.
Cancer Cell,
Volume 35, Issue 5, 13 May 2019, Pages 707-708
Jo Ishizawa, Sarah F. Zarabi, R. Eric Davis, Ondrej Halgas, Takenobu Nii, Yulia Jitkova, Ran Zhao, Jonathan St-Germain, Lauren E. Heese, Grace Egan, Vivian R. Ruvolo, Samir H. Barghout, Yuki Nishida, Rose Hurren, Wencai Ma, Marcela Gronda, Todd Link, Keith Wong, …Michae Andreeff
ミトコンドリアの起源は、原始真核細胞内にバクテリアの一種が取り込まれて共生した結果であるとされ(細胞内共生説)、これにより真核生物はエネルギー産生・呼吸・代謝を高等化し、生存に有利な進化を遂げたとされています。ある種のがん細胞はこのミトコンドリアとの共生状態をハイジャックし、元来の共生を超えた依存状態にあることが近年明らかになってきました。このことから、私達は次世代がん治療概念としての「ミトコンドリア標的療法」確立を目指す中、本論文では特にミトコンドリア内プロテアーゼClpPに着眼しました。ClpPの過剰活性化により、ミトコンドリア内の複数の重要なタンパク質が必要以上に分解され、ミトコンドリア機能が低下、その結果、がん細胞や白血病細胞が正常細胞に比して選択的に死滅する機構を証明しました。またカナダのグループとの国際共同研究によりClpPアゴニストとしての新薬imipridone(ONC201, ONC212)を同定し、結晶構造解析を駆使して薬剤の結合様式やClpPの三次元構造変化による活性様式を報告しました(図)。本研究結果は複数の癌種に対する米国でのONC201の治験立案とデザイン改善に寄与しており、次世代のミトコンドリア標的治療として臨床応用されることが期待されます。
(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病科 石澤 丈 内83回)
その他の掲載論文
1: Glutamatergic neurometabolite levels in major depressive disorder: a systematic review and meta-analysis of proton magnetic resonance spectroscopy studies
MOLECULAR PSYCHIATRY,
24 (7):952-964; 10.1038/s41380-018-0252-9 JUL 2019
Moriguchi S, Takamiya A, Noda Y, Horita N, Wada M, Tsugawa S , Plitman E, Sano Y, Tarumi R, El Salhy M, Katayama N, Ogyu K, Miyazaki T, Kishimoto T, Graff-Guerrero A, Meyer JH, Blumberger DM, Daskalakis ZJ, Mimura M, Nakajima S.