慶應義塾

1: Development of an immunodeficient pig model allowing long-term accommodation of artificial human vascular tubes

今月のサイエンス - 2019年07月

NATURE COMMUNICATIONS,

10 10.1038/s41467-019-10107-1 MAY 21 2019

Itoh M, Mukae Y, Kitsuka T, Arai K, Nakamura A, Uchihashi K, Toda S, Matsubayashi K,Oyama J, Node K, Kami D,Gojo S,Morita S,Nishida T, Nakayama K, Kobayashi E

責任著者の小林

ヒト細胞由来の再生医療製品等の有効性や安全性の検証にはブタサイズの実験動物での前臨床試験が望まれていました。しかしヒト細胞由来製品をブタに移植した際生じる異種免疫反応の制御がこれまで困難でした。遺伝子操作でマウスと同様にSCIDブタも作出されていますが、一般の動物実験環境では飼育ができませんでした。今回、外科的手法で免疫不全状態が調整できるブタモデル作出に成功しました。この技術は、ブタの種類を問わず、成熟したブタを用いて多くの実験ブタ施設で作出可能です。論文では、まずこれまでヒト由来細胞をブタに移植するさいスタンダードとされていた免疫抑制剤3剤を使って、ヒト由来線維芽細胞から作った血管を頸部動静脈にシャントとして移植しました。ところが移植片は残っているものの、拒絶反応が制御できず2週間で内腔に血栓形成を生じました(図A,B)。一方、新に開発したプロトコールで移植した場合、ヒト由来人工血管は最長6か月近く開存して、内膜、中膜を持つ血管として成熟しました(図C,D)。この検証実験は、第三者機関で信頼性基準に準拠して行われました。今後、ブタ体内でヒトの臓器を作り上げる研究にも役立てたいと思います。

(ブリヂストン臓器再生医学寄附講座 特任教授 小林英司 00相当)

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2: Molecular dynamics simulation-guided drug sensitivity prediction for lung cancer with rare EGFR mutations

PNAS,

116 (20):10025-10030; 10.1073/pnas.1819430116 MAY 14 2019

Ikemura S,Yasuda H,Matsumoto S,Kamada M, Hamamoto J, Masuzawa K, Kobayashi K, Manabe T, Arai D, Nakachi I, Kawada I, Ishioka K, Nakamura M, Namkoong H, Naoki K, Ono F, Araki M, Kanada R, Ma B, Hayashi Y, Mimaki S, Yoh K, Kobayashi SS, Kohno T, Okuno Y, Goto K, Tsuchihara K ,Soejima K

前列左から安田(責任著者)、副島(最終著者)、後列左から濱本純子(共同筆頭著者)、池村(筆頭著者

近年、がんの遺伝子異常に基づいて最適な抗がん剤を選択するがんゲノム医療が注目されています。がんゲノム医療の普及に伴い、繰り返し報告されるメジャーな遺伝子変異とは別に生物学的意義不明な“稀な遺伝子変異”が多く同定されています。稀な遺伝子変異に対しては有効な治療薬を選ぶ方法がなく、がんゲノム医療における大きな課題となっています。研究グループでは、国内最大の肺がん遺伝子スクリーニングネットワークLC-SCRUM-Japanと協力し、日本最大の臨床ゲノムデータベースに登録された2,164人の肺がん患者における稀なEGFR遺伝子変異の分布を明らかにしました。また、細胞実験により稀なEGFR遺伝子変異の薬剤感受性を評価しました。その結果、稀なEGFR遺伝子変異の多様な薬剤感受性を明らかにしました。さらに、遺伝子変異毎の多様な感受性を、細胞実験などを行わずに予測することを考え、スーパーコンピュータ「京」を用いた分子動力学シミュレーションを行いました。その結果、in silicoで予測した薬剤感受性が細胞実験で得たデータと高い相関を示すことを明らかにしました。本システムを実用化することで、稀な遺伝子変異を有するがん患者に対して最適な薬剤をin silicoで選択できるようになることが期待されます。

(呼吸器内科専任講師 安田浩之 80回)

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その他の掲載論文

1: Mining the microbiota for microbial and metabolite-based immunotherapies

NATURE REVIEWS IMMUNOLOGY,

19 (5):305-323; 10.1038/s41577-019-0144-5 MAY 2019

Skelly AN, Sato Y, Kearney S, Honda K

2: Ras homolog gene family H (RhoH) deficiency induces psoriasis-like chronic dermatitis by promoting T(H)17 cell polarization

JOURNAL OF ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY,

143(5):1878-1891;10.1016/j.jaci.2018.09.032 MAY 2019

Tamehiro N, Nishida K, Sugita Y, Hayakawa K, Oda H ,Nitta T, Nakano M, Nishioka A, Yanobu-Takanashi R, Goto M, Okamura T, Adachi R, Kondo K, Morita A, Suzuki H