慶應義塾

1: Gut pathobionts underlie intestinal barrier dysfunction and liver Th17 immune responses in primary sclerosing cholangitis.

今月のサイエンス - 2019年05月

Nature Microbiology

4, 492-503, 2019

Nobuhiro Nakamoto, Nobuo Sasaki, Ryo Aoki, Kentaro Miyamoto, Wataru Suda, Toshiaki Teratani, Takahiro Suzuki, Yuzo Koda, Hakusyo Cho, Nobuhito Taniki, Akihiro Yamaguchi, Mitsuhiro Kanamori, Nobuhiko Kamada, Masahira Hattori, Hiroshi Ashida, Michiie Sakamoto, Koji Atarashi, Seiko Narushima, Akihiko Yoshimura, Kenya Honda, Toshiro Sato, Takanori Kanai

筆頭著者の中本(前列右)と共著者

原発性硬化性胆管炎(PSC)は肝臓内外に存在する胆管に炎症が起こり数年から数十年の経過で肝硬変に至る難治性疾患であり、肝移植以外に有効な治療法がない。本疾患に炎症性腸疾患を高率に合併することから、病態への腸管炎症や腸内細菌の関与が示唆されてきたが、その詳細は明らかにされていない。我々のグループは病態への腸内細菌の直接的な関連性を明らかにするために、患者から提供された糞便微生物サンプルを無菌マウスに投与し、患者の腸内環境を再現した「ヒトフローラ化マウス」を用いて研究を行った。その結果PSC患者の便中に、肝臓内のTH17細胞の活性化を引き起こす3種類の腸内細菌が高確率で存在することを見出した。この中の1つであるクレブシエラ菌は大腸の上皮に穴を開け腸管バリアを破壊し、腸管の外にあるリンパ節に移行し肝臓内の免疫応答を誘導することを示すことに成功した。さらに、抗菌薬によるクレブシエラ菌の排除により、肝臓内に誘導されたTH17細胞が著明に減弱することが示された。本成果は、特定の腸内細菌が肝臓の炎症を起こす原因である可能性とその機序を示したもので、PSCに対する新たな治療薬や診断薬の開発につながることが期待される(図1)。

(消化器内科 中本伸宏 77回)

画像

2: A serum microRNA classifier for the diagnosis of sarcomas of various histological subtypes.

Nature Communications.

2019 Mar 21;10(1):1299. doi: 10.1038/s41467-019-09143-8.

Naofumi Asano, Juntaro Matsuzaki, Makiko Ichikawa, Junpei Kawauchi, Satoko Takizawa, Yoshiaki Aoki, Hiromi Sakamoto, Akihiko Yoshida, Eisuke Kobayashi, Yoshikazu Tanzawa, Robert Nakayama, Hideo Morioka, Morio Matsumoto, Masaya Nakamura, Tadashi Kondo, Ken Kato, Naoto Tsuchiya, Akira Kawai & Takahiro Ochiya

左から、落谷孝広プロジェクトリーダー(国立がん研究センター研究所分子細胞治療分野/現 東京医科大学教授)、浅野(筆頭著者1)、松崎(筆頭著者2)

本研究は日本医療研究開発機構(AMED)の次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」の支援を受け行ったものです。本研究は、過去最多の897例(悪性:414例、中間悪性:144例、良性:339例)の骨軟部腫瘍患者の血清マイクロRNAを網羅的に解析(DNA チップ、3D-Gene、マイクロRNA2,565種類)し、血清マイクロRNAの発現様式の特徴は、悪性と良性で大きく異なる事を見出しました。さらに、悪性の骨軟部腫瘍患者で高発現の7種のマイクロRNAを組み合わせた診断指標同定して、悪性に対し感度90%、特異度95%と非常に高い精度で良悪性の判別が可能であることを確認しました。本研究成果は、診断の困難な希少がんである骨軟部腫瘍の診断精度の向上、再発の早期診断などが微量の血液検査で可能となる可能性を示した点で大きな意義があると考えます。今後、さらに検証を重ねて、実際の臨床の現場で役立つバイオマーカーとなることを期待しています。

(整形外科学 浅野尚文 83相当、消化器内科学 松崎潤太郎 84回)

図:ROC曲線/選定された7つの血清マイクロRNA各々のROC曲線(左)と7つの血清マイクロRNAを用いた判別式Index VIのROC曲線(右)

その他の掲載論文

1: Toward a new generation of smart skins

Nature Biotechnology,

volume 37, pages382–388 (2019)

Takao Someya & Masayuki Amagai

2: F-18-Fluoride Positron Emission Tomographic Imaging of Penile Arteries and Erectile Dysfunction

JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY,

APR 2 2019, 73 (12):1386-1394;10.1016

Nakahara, T; Narula, J; Tijssen, JGP; Agarwal, S; Chowdhury, MM; Coughlin, PA; Dweck, MR; Rudd, JHF; Jinzaki, M; Mulhall, J; Strauss, HW