今月のサイエンス - 2019年02月
CIRCULATION,
OCT 30 2018, 138 (18):2021-2035; 10.1161
Shirakawa K, Endo J, Kataoka M, Katsumata Y, Yoshida N, Yamamoto T, Isobe S, Moriyama H, Goto S, Kitakata H, Hiraide T, Fukuda K, Sano M
我々は今回の研究で、心筋梗塞後の組織修復・補強に重要な免疫細胞(オステオポンチン産生性マクロファージ)を発見し、その増殖・分化する仕組みを明らかにしました。急性心筋梗塞により心筋が壊死すると、心筋細胞には再生機能がないため、心筋梗塞部位の心筋が薄くなり、心臓は十分な血液を体に送り出せないようになります。傷害を受けた心臓組織の修復、薄くなった心筋組織の補強を促し、心機能を回復させることが心筋梗塞患者生存率の改善につながると考えられています。心筋梗塞部位には、さまざまな免疫細胞が集まってきますが、なかでも、マクロファージは、創傷治癒にとって重要な役割を担っていると考えられております。今回マウスを用いた研究により、壊死組織に集まるマクロファージはオステオポンチンという物質を産出することで、破壊された組織の残骸を貪食し、さらに、線維芽細胞に働きかけて線維組織素材の合成を促して組織を修復・補強していることを発見しました。さらに、骨髄から動員され心筋梗塞部位に入ってきた単球がオステオポンチンを産生するマクロファージへと分化する仕組み(IL-10とgalectin-3が関与)を明らかにしました。本研究の成果は、心筋梗塞を起こした組織で組織の修復・補強能力の高いマクロファージを増やすことにより患者さんが持っている治癒力を高め、心不全の発症を予防する画期的な治療法の開発に寄与するものと期待されます。本研究成果は、アメリカ心臓協会のジャーナルである『Circulation』に掲載されました。
(循環器内科 佐野元昭 71回、白川公亮 88回)
2: Human Intestinal Organoids Maintain Self-Renewal Capacity and Cellular Diversity in Niche-Inspired Culture Condition.
CELL STEM CELL,
DEC 6 2018,23 (6):787-+; 10.1016
Fujii M, Matano M, Toshimitsu K, Takano A, Mikami Y, Nishikori S, Sugimoto S, Sato T
体内の多くの組織は、3次元的な美しい組織構造を形作っております。それぞれの組織細胞は特有のルールをもっており、ルールに基づいて創発的な自己組織化が起こると考えられています。従来の細胞培養では、単一の種類の細胞を培養皿の上で単層に増殖させる培養方法が一般的でしたが、組織細胞の自己組織化能力を利用した“オルガノイド”と呼ばれる3次元構造を作る技術が注目を集めております。我々はたった1つの腸管上皮幹細胞から腺管構造様のオルガノイドを作れることを報告し、また、国内外の様々な研究者があらゆる組織を対象としたオルガノイド技術を開発しております。マウスの腸管上皮オルガノイドは全ての分化細胞を作れるのですが、ヒトの腸管上皮オルガノイドは一部の分化細胞しか作れず、また、単一細胞から“クローン化”オルガノイドを形成させることが困難でした。本研究では、最適なヒト腸管オルガノイド培養技術の開発を目指しました。新しい培養方法では、IGF1とFGF2という増殖因子を用い、全ての種類の腸管上皮細胞に分化できるヒト腸管オルガノイドの作成や、これまで困難であったラットの腸管オルガノイドの長期培養に成功しました。 今回の技術は、今後、ヒトの腸管疾患モデルや再生医療への応用が期待されます。
(オルガノイド医学 佐藤俊朗 76回)
その他の掲載論文
1: Increased Levels of Branched-Chain Amino Acid Associated With Increased Risk of Pancreatic Cancer in a Prospective Case-Control Study of a Large Cohort.
GASTROENTEROLOGY,
NOV 2018, 155 (5):1474-+; 10.1053
Katagiri R, Goto A, Nakagawa T, Nishiumi S, Kobayashi T, Hidaka A, Budhathoki S, Yamaji T, Sawada N, Shimazu T, Inoue M, Iwasaki M, Yoshida M, Tsugane S
2: Association of Renin-Angiotensin Inhibitor Treatment With Mortality and Heart Failure Readmission in Patients With Transcatheter Aortic Valve Replacement
JAMA-JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION,
DEC 4 2018, 320 (21):2234-2244;10.1001
Inohara T, Manandhar P, Kosinski AS, Matsouaka RA, Kohsaka S, Mentz RJ, Thourani VH, Carroll JD, Kirtane AJ, Bavaria JE, Cohen DJ, Kiefer TL, Gaca JG, Kapadia SR, Peterson ED, Vemulapalli S
3: Regulatory T-cell dysfunction induces autoantibodies to bullous pemphigoid antigens in mice and human subjects.
JOURNAL OF ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY,
DEC 2018, 142 (6):1818-+;10.1016
Muramatsu K, Ujiie H, Kobayashi I, Nishie W, Izumi K, Ito T, Yoshimoto N, Natsuga K, Iwata H, Shimizu H