今月のサイエンス - 2018年09月
Nat Med.
2018 Feb;24(2):232-238. doi: 10.1038/nm.4462. Epub 2018 Jan 8.
Koshu Okubo, Miho Kurosawa, Mako Kamiya, Yasuteru Urano, Akari Suzuki, Kazuhiko Yamamoto, Koji Hase, Koichiro Homma, Junichi Sasaki, Hiroaki Miyauchi, Tatsuo Hoshino, Matsuhiko Hayashi, Tanya N Mayadas & Junichi Hirahashi
災害においては被災者の外傷が多発しますが、その中でも機械的な圧迫により筋肉が壊れてしまう状態(横紋筋融解症)においては、しばしば急性に腎臓の機能障害が起こり命に関わるCrush症候群を引き起こします。しかし、なぜ筋肉の崩壊によって腎臓の障害が起こるのか、詳細なメカニズムは明らかにされていませんでした。また、本症に対する治療選択肢は大量輸液・腎代替療法等医療機関で施行すべき専門的なものに限られ、被災現場で迅速・簡便に携帯・投与可能なAKI予防法がない現状です。今回、研究グループでは、血小板が筋肉由来のヘムを認識して活性化し、白血球の一細胞であるマクロファージの起こす細胞外クロマチン放出現象(マクロファージ細胞外トラップ:METs)をおこすことが、横紋筋融解症に続発する急性腎障害発症のカギであることを発見しました。また、研究グループは生体内多機能タンパクであるラクトフェリンがこの病態を予防することも見出し、災害医療に大きく貢献する可能性を示しました。METsが疾患の病態に関与することが示されたのはこの報告が世界で初めてとなり、2018年2月にNature Medicine誌に発表されました。
(総合診療科 平橋淳一 72回)
2: Multi-omics monitoring of drug response in rheumatoid arthritis in pursuit of molecular remission
NATURE COMMUNICATIONS,
9 10.1038/s41467-018-05044-4 JUL 16 2018
Tasaki Shinya, Suzuki Katsuya, Kassai Yoshiaki, Takeshita Masaru, Murota Atsuko, Kondo Yasushi, Ando Tatsuya, Nakayama Yusuke, Okuzono Yuumi, Takiguchi Maiko, Kurisu Rina, Miyazaki Takahiro, Yoshimoto Keiko, Yasuoka Hidekata, Yamaoka Kunihiro, Morita Rimpei, Yoshimura Akihiko, Toyoshiba Hiroyoshi, Takeuchi Tsutomu
関節リウマチ(RA)は、疾患修飾性抗リウマチ薬の進歩により、病状の進行抑制が可能となってきましたが、痛み、機能障害、疲労感などが残存してしまうことがあり、薬剤が不要となるような持続的な寛解状態はまだ十分に達成されていません。そこで、臨床的に炎症が認められる患者に薬剤治療を行い関節の痛みや腫れがほぼない寛解状態(臨床的寛解)となった時体の分子状態の特徴を調べました。患者末梢血中の分子の発現量のデータに基づいて分子的寛解を定義し、分子状態を経時的に観察したところ、薬物療法により分子的寛解が誘導され、その程度が持続的な寛解に重要であることが明らかとなりました。【図】一方で、一部の分子特徴は薬物療法後も依然として健常人と異なっており、これらは現在用いられている炎症度合いや身体機能障害の指標とは関連しないRA患者の特徴であることも見いだされました。さらに、患者体内の分子情報に関する公共データを利用した解析から炎症性腸疾患や肥満患者の特徴と共通点が認められることから、これらの疾患の病態解明や創薬への応用の可能性も考えられました。RAの精密医療の実現や新規創薬に向けて研究を進めていきたいと考えています。
(リウマチ・膠原病内科 竹内勤 59回、鈴木勝也 75回)
その他の掲載論文
1: Investigation of brain science and neurological/psychiatric disorders using genetically modified non-human primates
CURRENT OPINION IN NEUROBIOLOGY,
50 1-6; 10.1016/j.conb.2017.10.016 JUN 2018
Okano Hideyuki, Kishi Noriyuki