今月のサイエンス - 2018年03月
Genes & Dev
Chai M, Sanosaka T, Okuno H, Zhou Z, Koya I, Banno S, Andoh-Noda T, Tabata Y, Shimamura R, Hayashi T, Ebisawa M, Sasagawa Y, Nikaido I, Okano H*, and Kohyama J*. (* Corresponding Authors)
ヒトiPS細胞技術が確立したことにより、患者由来の細胞を用いた疾患解析が可能となってきています。我々の研究グループではエピジェネティックな遺伝子発現制御機構に着目した解析を実施してきましたが、小児疾患においてエピジェネティックスを制御する因子に変異や欠失をもつことから今回CHARGE症候群に着目して解析を進めました。CHARGE症候群は、視覚と聴覚の二重障害を主とする先天性疾患であり、2004年に、CHD7遺伝子の突然変異と関連あることが報告されております。CHD7はクロマチンリモデリング因子として知られておりますが、その詳細な機能、またはCHARGE症候群における病態への関与については明らかではありませんでした。そこで我々は次世代シーケンスを利用し、CHD7の標的領域を探索し、CHD7が中枢神経系特異的なエンハンサー領域に結合し、その活性を維持していることを見出しました。さらにCHD7に対するshRNAや患者由来細胞を利用することでCHD7は神経前駆細胞の性質を維持すること、その破綻により神経細胞への分化能が著しく減弱し、神経前駆細胞が神経堤細胞様の細胞へと分化転換してしまうことが明らかとなりました。また、我々はこれらの異常の原因としてSOX21や BRN2などの遺伝子を見出し、これらの因子はCHD7の異常によって起こる神経前駆細胞の異常を回復させることが可能でした。同様な手法で先天性疾患に対するアプローチが可能であり、これらの疾患に対する治療法の確立が期待されます。
(生理学教室 神山 淳 81回)
2: Japan strengthens regenerative medicine oversight.
2014年11月25日に、我が国では、再生医療を推進するという政府の方針とともに、再生医療安全確保法そして改正薬事法(薬機法)が施行となり、再生医療の規制状況が多く変革を遂げている。医学部生理学教室およびKeio University Global Research Institute (KGRI)の岡野 栄之教授とDouglas Sipp特任教授は、このCell Stem Cell誌の論文では、現在の我が国の再生医療の規制を以下のように分析している。再生医療等安全確保法により、再生医療等提供計画(医療および研究)は、その危険度や新規性に基づき第1種、第2種、第3種に分類されるようになった。これは、そもそも野放し状態であった再生医療の自由医療行為を認定制にするのが、この法律の一つの狙いであったことが背景にある。特定認定再生医療あるいは認定再生医療委員会の承認を得た件数でみると、第3種が圧倒的に多い(~97%)。件数でいうと3541件の総数のうち、かつては自由診療であった3種の医療行為は、実に3486件にも及び(2017年8月31日時点)、その質の管理が重要な問題となっている。一方、法律施行により、臍帯血を用いた再生医療行為を無届けで行った医師の逮捕と有罪確定という事態がおきている。これに対応し、政府もこの法律の施行における透明性を増すように法律改定に向けて動き出している。再生医療の法制度は、施行開始から4年目にあり、まだまだ成長期にある言えよう。今回の論文は、さらに米国での21st Century Cure Actによる再生医療関連法の改正など、日本のこの法律制定に刺激を受けた海外の状況についても分析を行っている。
(生理学教室 岡野栄之 62回)
その他の掲載論文
1: gamma delta TCR recruits the Syk/PI3K axis to drive proinflammatory differentiation program
JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION
128 (1):415-426; 10.1172/JCI95837 JAN 2 2018
Muro Ryunosuke, Nitta Takeshi, Nakano Kenta, Okamura Tadashi, Takayanagi Hiroshi, Suzuki Harumi