今月のサイエンス - 2018年02月
Cell Stem Cell.
2018 Jan 4;22(1):91-103.e5. doi: 10.1016
Kazutaka Miyamoto, Mizuha Akiyama, Fumiya Tamura, Mari Isomi, Hiroyuki Yamakawa, Taketaro Sadahiro, Naoto Muraoka, Hidenori Kojima, Sho Haginiwa, Shota Kurotsu, Hidenori Tani, Li Wang, Li Qian, Makoto Inoue, Yoshinori Ide, Junko Kurokawa, Tsunehisa Yamamoto, Tomohisa Seki, Ryo Aeba, Hiroyuki Yamagishi, Keiichi Fukuda, Masaki Ieda
我々はこれまで、心臓線維芽細胞に3つの心筋誘導遺伝子を、遺伝子の運び屋であるレトロウイルスベクターを用いて導入し、直接心筋細胞を作製できることなどを報告してきた。しかし、従来の方法では、1) 心筋誘導の際にウイルスベクターによって3つの遺伝子が組み込まれるために、細胞のゲノムを損傷する可能性がある、2) 心筋誘導効率が低く、心筋作製に長期間かかるという課題があった。本研究で筆者らは3つの心筋誘導遺伝子を同時に発現するセンダイウイルスベクターを開発した。これを用いて、培養皿で効率よく短期間でマウスおよびヒト線維芽細胞から心筋細胞をゲノムの損傷なく、直接作製することに成功した。さらに心筋誘導センダイウイルスベクターをマウス心筋梗塞モデルの心臓に遺伝子導入すると、治療後1週間で心筋再生が始まり、1か月後には心機能が改善することを発見した。 以上より、世界で初めて細胞のゲノムを損傷することなく、効率よく短期間で心筋を直接作製し、心臓再生に成功した。今後、心筋梗塞や拡張型心筋症をはじめとするさまざまな心臓疾患に対する再生医療への応用が期待される。
(循環器内科 左が宮本和享 84回、家田真樹 74回)
2: Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives T(H)1 cell induction and inflammation
SCIENCE
358 (6361):359-+; 10.1126/science.aan4526 OCT 20 2017
Atarashi Koji, Suda Wataru, Luo Chengwei, Kawaguchi Takaaki, Motoo Iori, Narushima Seiko, Kiguchi Yuya, Yasuma Keiko, Watanabe Eiichiro, Tanoue Takeshi, Thaiss Christoph A., Sato Mayuko, Toyooka Kiminori, Said Heba S., Yamagami Hirokazu, Rice Scott A., Gevers Dirk, Johnson Ryan C., Segre Julia A., Chen Kong, Kolls Jay K., Elinav Eran, Morita Hidetoshi, Xavier Ramnik J., Hattori Masahira, Honda Kenya
口腔常在菌は、唾液と共に毎日沢山飲み込まれますが、通常腸管には定着しません。しかし、炎症性腸疾患患者や肝硬変の患者さんの腸管には、口腔菌が多く定着していることが報告されています。腸管内に異所性に定着することによって免疫系を活性化する口腔菌が存在すると考えられ、私たちはそうした菌を探索することにしました。クローン病患者さん達の唾液を無菌マウスに経口投与し、腸管に存在する免疫細胞を解析した結果、ある患者さんの唾液を投与したときに、インターフェロンガンマ(IFN‒γ)を産生するCD4陽性ヘルパーT細胞(TH1細胞)が腸管で増加することがわかりました。腸に定着した細菌を培養し、8種類の菌を単離しました。8菌種の内、クレブシェラに属する細菌がTH1細胞誘導の責任細菌である事がわかりました。このクレブシェラ菌は、腸炎モデルを増強する働きがある事もわかりました。さらに、この口腔由来クレブシエラ菌は、正常な腸内細菌が存在しているマウスに投与した場合、腸内への定着がおこらず、抗生物質の使用などによって腸内細菌叢が乱れた場合にのみ定着することがわかりました。このことから過度の抗生物質の投与により、健常者においても腸管へのクレブシエラ属菌の定着が起こる可能性が示唆され、抗生物質の使用は十分注意して行うべきだと考えられました。
(微生物学・免疫学教授 本田賢也 73相当)