今月のサイエンス - 2018年12月
HEPATOLOGY
SEP 2018, 68 (3):1025-1041; DOI: 10.1002/hep.29904
Kurebayashi Yutaka, Ojima Hidenori, Tsujikawa Hanako, Kubota Naoto, Maehara Junki, Abe Yuta, Kitago Minoru, Shinoda Masahiro, KitagawaYuko, Sakamoto Michiie
免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴い抗腫瘍免疫の研究が盛んに行われていますが、免疫細胞がどのような組み合わせで腫瘍に浸潤しているのかを直接かつ網羅的に観察した研究は少ないのが現状でした。そこで我々は、多重免疫染色とクラスター分析を組み合わせて肝細胞癌の免疫微小環境を分類することを試みました。これにより、肝細胞癌の免疫微小環境が大きく3種類に分類され、T細胞浸潤に加えてB細胞/形質細胞浸潤に特徴づけられる「Immune-high」群に属する肝細胞癌の予後が非常に良いことがわかりました。興味深いことにImmune-high群は予後不良群と考えられる低分化型肝細胞癌に比較的多く集積し、低分化型肝細胞癌や、さらに強い予後不良因子であるCK19陽性肝細胞癌においてもImmune-high群に属するものは予後が良いことがわかりました。また、肝細胞癌が多段階発癌の良いモデルであることを用いて、腫瘍の免疫微小環境が多段階発癌の過程に伴い段階的に変化することを示しました。これらの結果は、免疫微小環境を病理学的に評価することの意義を改めて示すとともに、ヒト腫瘍に浸潤するB細胞/形質細胞の機能解析の必要性を示すものと考えています。
(病理学教室教授 坂元亨宇 64回、
病理学教室助教(現アメリカ国立がん研究所客員研究員)紅林 泰 90回)
2: Glutamatergic Neurometabolite Levels in Patients with Ultra Treatment-Resistant Schizophrenia: a Cross-sectional 3T Proton MRS study
Biol Psychiatry.
2018 Sep 26. pii: S0006-3223(18)31852-3. doi: 10.1016/j.biopsych.2018.09.009.
Yusuke Iwata,Shinichiro Nakajima,Eric Plitman,Fernando Caravaggio,Julia Kim,Parita Shah,Wanna Mar,Sofia Chavez,Vincenzo De Luca,Masaru Mimura,Gary Remington,Philip Gerretsen,Ariel Graff-Guerrero
統合失調症は全人口の約1%で発症し、幻覚や妄想を前景症状とした著しい社会機能低下を伴う疾患である。統合失調症の薬物治療の中心はドパミン阻害作用を持つ抗精神病薬だが、約3割の患者は治療に反応しない。これら治療抵抗性患者はドパミンの生成能が健常者と差がないことが報告されており、治療抵抗性患者に唯一有効な抗精神病薬クロザピンはドパミン阻害作用が弱い。近年、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を使用した研究で治療抵抗性患者の前帯状回グルタミン酸濃度が高いことが繰り返し報告されており、治療抵抗性患者の病態生理はグルタミン酸神経伝達の異常に基づいている可能性がある。本研究は26名のクロザピン抵抗性患者、27名のクロザピン反応性患者、21名の非クロザピン治療反応性患者、26名の健常者で前帯状回におけるグルタミン酸濃度を検討した。結果としてクロザピン抵抗性患者の前帯状回グルタミン酸濃度が健常者に比較し高いことを明らかにした。我々は現在MRSを使用しクロザピン導入前後の脳内グルタミン酸濃度の変化を検討する研究を行っている。この研究により治療抵抗性患者における新たな治療の道が開くことが期待される。
(精神神経科 岩田祐輔 87相当、中島振一郎 81回、三村 將 63回)
その他の掲載論文
1: The group 2 innate lymphoid cell (ILC2) regulatory network and its underlying mechanisms
IMMUNOLOGICAL REVIEWS,
286 (1):37-52;DOI: 10.1111/imr.12706 NOV 2018
Kabata Hiroki, Moro Kazuyo, Koyasu Shigeo