慶應義塾

1: MAFB prevents excess inflammation after ischemic stroke by accelerating clearance of damage signals through MSR1

今月のサイエンス - 2017年08月

NATURE MEDICINE

23 (6):723-+; 10.1038/nm.4312 JUN 2017

Shichita Takashi, Ito Minako, Morita Rimpei, Komai Kyoko, Noguchi Yoshiko, Ooboshi Hiroaki, Koshida Ryusuke, Takahashi Satoru, Kodama Tatsuhiko, Yoshimura Akihiko

脳卒中の約7割を脳梗塞が占めており総患者数は100万人を超えると言われているが有効な治療法は乏しい。我々はこれまで脳梗塞部位にはマクロファージが浸潤して炎症が拡大し、神経症状が悪化することを報告して来た。梗塞部位に浸潤したマクロファージは、DAMPsと呼ばれる死細胞由来の成分を認識して炎症性サイトカインを放出する。しかし発症3、4日後になるとDAMPsは消失し炎症は収束に向かう。本研究で我々はマクロファージがDAMPsを処理する受容体としてスカベンジャー受容体を同定し、さらに転写因子Mafbがこの受容体を発現誘導することを見出した。また白血病の治療に使われているビタミンA誘導体Am80がMafbを活性化しDAMPsの処理を早めて脳梗塞部位を縮小させ神経症状の回復も早めることを発見した。本研究は脳損傷後の炎症の収束のメカニズムを解明すると同時に、これを早めるという全く新しい治療戦略を提示した。

(微生物学免疫学教室 吉村昭彦 60相当)

2: Notch-mediated conversion of activated T cells into stem cell memory-like T cells for adoptive immunotherapy

NATURE COMMUNICATIONS

8 10.1038/ncomms15338 MAY 22 2017

Kondo Taisuke, Morita Rimpei, Okuzono Yuumi, Nakatsukasa Hiroko, Sekiya Takashi, Chikuma Shunsuke, Shichita Takashi, Kanamori Mitsuhiro, Kubo Masato, Koga Keiko, Miyazaki Takahiro, Kassai Yoshiaki, Yoshimura Akihiko

免疫チェックポイント阻害剤が標準治療に用いられるようになって、がんの免疫療法は新時代を迎えている。腫瘍に集積している細胞障害性T細胞を体外で増幅して患者に戻す養子免疫療法もさかんに研究されている。しかし腫瘍に集まっているT細胞はすでに疲弊した状態にあり、増殖させることが難しい。そこで疲弊したT細胞を若返らせてもう一度活性化できれば強い抗腫瘍効果が得られるだろう。我々は一旦活性化し疲弊したT細胞をNotchというシグナル分子を発現しているストローマ細胞と共培養すると、未感作状態の若返った細胞が出現することを見出した。このT細胞はは他のどの種類のT細胞よりも素早く抗原に反応して増殖し、寿命も長く、抗腫瘍活性が強かった。メカニズムはまだわからないが、疲弊したT細胞をストローマ細胞と共に培養するという簡便な方法で若がらせることが可能であることが示された点で、今後の抗腫瘍免疫療法に大きなインパクトを与えると考えられる。

(微生物学免疫学教室 吉村昭彦 60相当)

写真右が1:筆頭著者の七田崇(東京都医学総合研究所 脳卒中ルネサンスプロジェクトチームリーダー)、2:筆頭著者の近藤泰介(助教)
画像
画像